日英薬剤師日記

イギリスの国営医療(NHS)病院で働く、臨床薬剤師のあれこれ

緑色のペン

英国の薬剤師が「必ず」持っているもの --- 緑色のペン。

英国の医療機関では、処方せんをチェックしたり、医師への問い合わせ、看護師への申し送りなどに、緑色のペンで書き残すと、「これは薬剤師がチェック / コメントした」と見なされる。起源は定かではないけれど、英国では、薬局のマークが緑の十字だから、緑色は、ここから由来しているのだと思う。

英国には、日本の薬剤師が各自携帯しているようなハンコがない。調剤薬の最終監査も、 緑色のペンで、自分独特のサインをすることで、責任を取ることにしている。

言い換えれば、緑色のペンは、薬剤師しか持てない。

ファーマシーテクニシャンやアシスタント、薬学生や仮免許中の研修薬剤師が、緑色のペンを使用するのは禁じられている。責任の所在を明らかにするために。

私自身、英国の薬剤師免許試験に合格した時、「ああ、これからは、緑色のペンが持てるんだな」と、誇らしく思った。そして、初めて緑色のペンで、自分のサインをした時、その責任の重さに、身が震える思いだった。

薬局によっては、画一の緑色のペンを経費で購入し、薬剤師に支給しているところもある。でも、昨今の不景気で、薬剤師に、各自自費で購入させるようにしているところが大多数。

英国の文房具屋さんで、緑色のペンを大量に買い込む人を見かけたら、薬剤師だと思って、ほぼ間違いない。必需品だから。

緑色のペンも、色々なものが売られている。

どのようなペンを持つかは、それぞれの薬剤師の個性が表れ、観察すると楽しい。

安上がりに済ませようとする人は、ダース買いできる、何の変哲もない、普通の緑色のボールペン、

おしゃれな薬剤師は、明るい緑色のジェルペン、

でも、私の同僚の間で断トツ人気なのは、日本製の消せるペンやら、超極細に書けるペン、

緑色のインクの万年筆を持つ、先輩薬剤師もいる。

私も、色々試したけど、今は、フランスBiC社の4色ボールペンに落ち着いている(写真)。これも、英国薬剤師の間で、根強い人気を誇るペン。

私は、筆圧が高いので、1.0mmの先端のペンが、まず第一条件。そうすると、日本製のペンは、ほぼ見当たらない。そして、仕事上、緑以外の色も使うことが多く、このボールペンは緑・黒・青・赤色が一本になって便利。 日本だったら、製薬会社からの景品にありがちな、このような多色ボールペンが、英国では皆無に等しい。事実上、このフランス製BiCの4色ボールペンが、英国で独占販売されている状態。

私は、現在、 英国の国営病院で、臨床薬剤師として働いている。よって、緑色のペンの使用量も半端ない。替芯を常備し、3週間に1本は使い切っている。

写真は、職場のID カードにぶら下げられた、私の愛用の緑色(4色)BiC ボールペン。これ、元は、黒い持ち手のところに、ハロー・キティの柄がついていたの(右側のペンが本来の新品状態)。長年使用するうちに、すっかり消えてしまった。

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英国の国営病院では、薬剤師が白衣を着ることは、殆どない。私の病院では、私服に、この緑色の紐のIDカードをぶら下げ、薬剤師と認識されている。

 

「緑色」、そして特に、「緑色のペン」。これぞ、英国薬剤師のイメージ&シンボル。

 

ちなみに、この写真の、愛用の緑色ペンの両隣にあるのは、日本製の「消せる蛍光ペン」と「畳めるホチキス」。仕事上、両者とも大活躍で、日本に休暇滞在する度に、いつも予備を大量に買ってくる。同僚へのお土産としても最高。日本の文房具の質は、世界一だね。唯一、緑色のペンだけ、日本製のものが使えないのが、残念だけど。

 

では、また。