この2週間ほど、日本へ帰国し、休暇を取っていました。
ここ数ヶ月、日本でお会いしたい方々の顔がたくさん浮かんでおりました。でも、何せ、離陸の前日まで、日夜拘束の当直をしており(→この6週間で、3コマの当直勤務をこなした。このあり得ない労働条件とそれに伴うストレスについては、後日、このブログでも書きたい)、疲労困憊の中での旅の始まりでした。
そのため、今回は、できるだけ、骨休めに徹する期間としました。
実際に、この休暇の後半は、今までにない体調不良も起こり。。。。(→この件に関しては、次回のエントリで)
ご無沙汰してしまっている皆さま、お会いできず、本当に、ごめんなさい。
でもね、私、見知らぬ場所へ行くと、薬局巡りだけは止められない(笑)
という訳で、今回は、出発地であったロンドン・ヒースロー空港第2ターミナル内の薬局の紹介。
ここ、近年、私が、英国内の空港で一番使用している場所。ANAのロンドン⇄羽田便の発着地(写真⬇︎)だからね。
で、まずはこちら。出国セキュリティーを通過した後、すぐのところにある「ブーツ (Boots)」薬局(写真⬇︎)。
この店舗、英国の主流ブランドのトイレトリー製品が100ml 以下のミニチュアになったものが、店舗のかなりの面積を占める割合で陳列されている(写真⬇︎)のが特徴。
現在、世界のほぼ全ての国際空港で適応されている「100ml 以上の液体物の機内持ち込み制限」は、2006年8月に、まさにこのロンドン・ヒースロー空港から出発予定であった、米国・カナダ行きの旅客機7機を同時爆破するテロ計画が未然に発覚された事件がきっかけ。
爆破に使用されるはずだった化学物質を、首謀者たちが 500ml の炭酸飲料のプラスチックのボトルに入れて運ぼうとしていたことから、それ以後、英国発の国際線が「大量の液体物の機内持ち込み禁止」を始め、それが世界中に拡がったという経緯がある。
だから、その起源であるヒースロー空港内の薬局では、英国随一というほどの品目の、100ml 以下のミニチュア製品が取り揃えられているのだと、解釈。
それから、こちらの薬局には「休暇・渡航用 (holiday & travel health) 」商品専用の棚があった。前回、こちらの薬局を訪れた際はなかった(はず)。新しい試みなんだな、で、「休暇・渡航用医薬品」って、一体、どんなものが置かれているのかなーと、興味津々に観察してみると。。。
「エソメプラゾール (PPI)」、「ガビスコン(英国で売り上げナンバーワンの胃薬)」、「イモディウム(ロペラミン)」「アルカセルツアー(アスピリンと胃酸中和薬の混合剤)」「レムシップ(総合感冒薬)」などがありました。あとは、ブーツ薬局プライベートブランドの便秘薬とか、解熱鎮痛薬や、アレルギー治療薬などだった。
ちなみに、ANA羽田行きの便の搭乗口は、通常、ヒースロー空港第2ターミナルビルの中でも、最末端の一つとなっている。だから、出国セキュリティーを通過した後、ものすごく歩く。
で、てくてく歩いていると、その途中に、こんなお店もある(写真下⬇︎)
ここ、一般市販薬の種類が、ものすごく充実している。
英国の医薬品は、以下の3種に大別されているのですが;
「GSL(General Sales List medicine の略):一般市販薬」薬剤師不在の場所でも購入できる薬
「P(Pharmacy Medicine の略):薬局販売薬」薬剤師常勤の場所でのみ購入できる薬
「POM(Prescription Only Medicine の略):要処方せん薬」処方せんによって調剤される薬
英国の主要なGSL が一ヶ所でこれだけ取り揃えられた場所、私が知る限りでは、ここが一番(写真下⬇︎)。しかも、ここ、先のブーツ薬局より、よっぽど陳列が上手だと思う。
で、さらにずーっと歩いていくと、こちらのヒースロー空港第2ターミナルには、ANA 羽田行きの便の搭乗口の直前にも、なんともう一つ「ブーツ (Boots) 」がある。一つのターミナル内に、ブーツが2店舗って。。。 よほど儲かっているの?!
で、こちらの店舗にも、「休暇・渡航用」に特化した商品棚があったのですが(写真下⬇︎);
深部静脈血栓症防止のストッキングと、湯たんぽ、そして、虫刺され防止のスプレーや、生理食塩水など。医薬品としてはアレルギー薬のみの陳列。でも、一体全体、なぜ、渡航用品として、湯たんぽ? やはり、寒い国へ向かうときは、持っていくと便利なんでしょうか?
今回は、そんなことを考えつつ、日本へ向かいました。
それから唐突ですが、私は、いつも海外での休暇へ出かける際に、何らかの薬学参照本を機内に持ち込む。今回は、英国の薬剤師であれば誰もが知っている Kumar & Clark's シリーズの Medical Management & Therapeutics(⬇︎)を携えました。
これを話すと「へ? 何で休暇に、わざわざ仕事に関する本を持っていくの?」って、日英両国の同僚・友人・知人に、呆れられるのですが。。。
訳があるんです。
もうかれこれ数年前のことになりますが、今は無きヴァージンアトランティック航空のロンドン→成田路線で飛行途中、斜め向かいの座席の日本人の子供さんの体調が意識を失いかけるほど悪化している、という事態に遭遇したことがあった。
機内アナウンスで、医師が搭乗していないかという要請の放送があったのだけど、誰も名乗り出なかった。ぐったりしている子供さんを前にし、私と一緒にいた友人(→英国薬剤師)が、見放っておけず、何かできることがないかと、申し出た。
発熱しており、前日から何も口にしていないと、そのお子さんのご両親が説明されたため、私が機内に持ち込んでいた英国国家医薬品集 (British National Formulary、通称 BNF) を広げて、そこに記載されていたパラセタモール(=日本のアセトアミノフェン)の量を確認し、そして、これまたその英国国家医薬品集に記載されていた通りの低血糖時の対処法を、その友人と推奨したの。
英国国家医薬品集(通称 BNF )の詳細については、過去のエントリも、こちらからどうぞ(⬇︎)
その時知ったのだけど、パラセタモール(=アセトアミノフェン)の小児の用量、日本と英国で、かなり異なるのね。で、その、日本人にとっては過剰量とも言えるパラセタモールを、低血糖の回復も兼ねて、とりあえずコップ一杯(=100ml 程度)のコーラで服用させるよう説明したら(→これ、英国国家医薬品集には、確かに、低血糖の対処法として明記されています)、お子さんのお母さまとお父さまが、その『英国流荒治療』にぎょっとした表情をされたのを覚えている。
でもね、私たちの助言通りにパラセタモールとコーラを服用させ、その満席だった便の機内の通路の一部に毛布を敷き詰め、横になれるような場所を作り、フライトアテンダントさんの一人が、その後の飛行中付きっきりで介護したお陰で、そのお子さん、成田に到着するまでには、熱も下がり、なんと一人で立ち上がれるようになっていたのよ。
だから、私、その時の教訓から、それ以後、どんな国へ行くときも、機内に必ず何らかの薬学参照本を持ち込むことにしているの。
それから、上の写真(⬆︎)にも小さく写っているのだけど、今回の旅では、いつもひどい時差ボケに苦しむ私に、ロンドンでホメオパスとして活躍する友人が、特別にレメディを調合し、持たせてくれた。お陰で、症状は今までになく軽く収まった。友人の心遣いに感謝。
この時差ボケ用レメディを調合してくれた友人のブログは、こちら(⬇︎)からどうぞ
時差ボケ対策に関しては、私の職場の国際色豊かな同僚たちの間でも、色々と話題となる。一般的には、メラトニンが認可されている国を訪れるたびに、個人の使用分として購入してくる、というのが主流のよう。
世界の医薬品の規制や、用量・対処法の違いを知るの、面白いし、いつも色々考えさせられる。
これぞ、薬学の国際卒後実践教育だね。
では、また。