日英薬剤師日記

イギリスの国営医療(NHS)病院で働く、臨床薬剤師のあれこれ

英国薬剤師免許更新の手続きと諸経費

 

すっかり後回しにしていたのですが;

 

今月は、年に一度の、自身の英国薬剤師免許の更新月だった。

 

実は今月、すんごく忙しかった。無理がたたり、途中で、久しぶりに風邪を引いたほど。だから、この英国薬剤師免許更新の手続き、最終締切日の月末が近づいてきているのにも関わらず、全く手をつけられない状態が続いていた。数日前までは「なんでこんなことになっちゃってんだろー(泣)」って真っ青になるほど、事態は深刻化していたのよ。。。

 

このブログ日記とか、定期的に更新している場合ぢゃなかったよね(爆笑)

でもねえ、私、基本的には、ほぼ全ての物事において「お尻に火がつくまで」やらない人。

という訳で、これ「いつもの事」よ。あはははは。。。

 

で、昨晩、どうにかこうにか、この英国薬剤師免許更新手続きを(ギリギリで)片付けた。

もう、達成感、半端ない!

やれやれ。。。。。

 

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英国薬剤師免許登録先 General Pharmaceutical Coucil ウェブサイト上の、数日前までの、私の免許更新用の個人アカウント。何も仕上げておらず、本当に冷や汗ものでした。。。


という訳で、今回は、英国の薬剤師免許を維持するために必要な諸々(もろもろ)を、色々と紹介してみようと思います。

 

英国の薬剤師免許登録は、英国政府独立機構の「General Pharmaceutical Council (通称、以下 GPhC) 」というところが管轄している。この組織は、その他にも、英国内の薬局の開局許可とか、ファーマシーテクニシャンの免許登録も統括している。日本人を含む外国人薬剤師の免許変換手続きなども、現在、ここが受付先。

The General Pharmaceutical Council (通称 GPhC) のサイトは、こちらです(⬇︎)

 

で、英国ではなんと去年から、薬剤師とファーマシーテクニシャンに対し「免許更新審査制度」というものが開始された。

今までの過去約10年間ほどは、「各薬剤師・ファーマシーテクニシャンは、各自の業種に適した職能向上のための教育・訓練を自主的かつ定期的に行い、GPhCから要求されれば、その証明となるようなレポートを提出すること」という仕組みになっていた。でも、去年から「免許更新の際に毎度、所定の記録の提出が必要となり、その提出物が審査され、更新が行われる」という規定に変更されたのだ。

で、今回の免許更新が、私にとって、この「新制度」での初回であった訳。

 

新しく始まった「英国薬剤師免許更新審査制度」では、以下の3つのことを提出しなければならない。

(1)過去1年間に、現在の仕事に関することで、職能向上のために、自分が実際に行なった学習・訓練内容を、所定の形式でレポート記述したもの4点

(2)自分の現在の仕事の状況について、過去1年を振り返り、誰か第3者と面談をし、その内容記録を提出

(3)「英国薬剤師倫理 (the Code of Ethics) 」の模範基準に即した行動が常に取れているかの、自身の具体例を挙げ、その省察的実践 (reflective practice) を行なったことの記述

 

ひえーーーーーーーっつ。 これ、結構な量と質の課題ぢゃない! と、今月初旬に気づき、パニック状態だった。

でも、よくよく調べてみたら、現時点では、この英国薬剤師免許更新審査制度、移行期の真っ只中ということで、今回に限っては、私は、(1)だけの提出で良いとのことが分かった(写真下⬇︎)。

ありがたやー。これで、めちゃくちゃ助かりました。。。。

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GPhC から事前に送られてきた、私の薬剤師免許更新のタイムライン。現在、この更新審査制度は、旧形式からの移行期であることから、各薬剤師によって、年に一度の登録料支払いの際に必要な提出物やそのスケジュールが、それぞれ異なる

 

で、この(1)「職能向上のために行なった学習・訓練のレポート」4点ですが、その内訳は;

2つは「自分で事前学習計画を立てたもの (planned) 」

もう2つは「思いがけない形で学んだこと (unplanned)」

でなければならないとのこと。

 

卒後教育学習とか、職能向上のための訓練を受けるとかって、薬剤師であれば、大なり小なり、誰もがやっている(と思う)。現在の私の仕事なんて、毎日、実践的に何かを学んでいるし、常に「あれも学ばなきゃ、これも学びたい!」の繰り返しだ。

でも、それを、誰かに審査される形として「提出用」に記録を書き上げるっていうのが、私、実はすごく苦手。英語が母国語ではないので、文章表現の点で(どうしても)ハンデがあるからね。でもね、英国の医療教育って、現在(残念ながら)大半がこの評価形式を取っている。

私の「プレレジ(仮免許)薬剤師時代」の研修なんて、ほぼ全てがこの評価法で行われていた。英国の薬剤師になるための「実地」訓練期間だったはずが、(ぶっちゃけ)記録のための「英作文」を延々と書いていた記憶しかない。本当に大変な一年だったな。。。

 

なーんて、昔のトラウマに囚われて、今回のこの「更新免許手続き」、一向に捗らなかったのだ。。。

 

でも、そんなことをうだうだ言っている場合ではなかった。で、先週末、ついに腹を括り、今回の提出用の「記録」を書きあげた。自室に丸2日間篭ってね。文字通り「背水の陣」だったなあ。 

それで結局、私が過去一年を振り返り「これぞ」という卒後教育・職能向上内容として提出したものは;

事前学習計画を立てたもの(1): 現在、英国抗菌化学療法学会 (British Society of Antimicrobial Chemotherapy) 主催の「抗真菌薬の適正使用」についてのオンライン学習コースを履修していること(一週間に一つのテーマが送信されてきて、通信教育のように学んでいます )。

この無料のオンラインコースにご興味のある方は、こちらからどうぞ(⬇︎)。私は、この「抗真菌薬の適正使用」の他に、以前「抗生物質の適正使用」のコースも履修しました。

事前学習計画を立てたもの(2): 職場のプレレジ(仮免許)薬剤師向けに行なった、尿路感染症の臨床薬学講義の準備中に学んだこと

その時の詳細は、こちらの過去のエントリもどうぞ(⬇︎)

思いがけない形で学習したこと(1): 夜間当直中に即座に学んだ、バルプロ酸中毒に使用される「カルニチン」のこと

その時の詳細は、こちらの過去のエントリもどうぞ(⬇︎)

思いがけない形で学習したこと(2): 最近、私の病棟で、痛風のためイブプロフェンをたった1−2日服用しただけで、あり得ないほどの急性腎不全を起こし、それから坂道を転がるように生死の境となった患者さんがいた。特に、高カリウム血症を早急に治療しなければならず、持病の肺血栓もあったことから、どうやってその「複雑なケース」に対し、臨床薬剤師の観点から、薬剤治療を推奨したかの症例記録

となりました。

臨床薬剤師として働いていれば、こういった「学び」は、日常茶飯時ですが、免許更新の審査をされる以上、その「採点基準」となる事項やキーワードなどを、その提出記録の中に含めなければならず、その結果、以上の4点に絞られた次第です。

でも、そのうちの2つは、以前このブログ日記に書いた話だった。書き残しておくこと、大切だなあ、と、つくづく思った次第(笑)。

 

で、これらをオンライン上から提出しつつ(写真下⬇︎)。。。

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今回の薬剤師免許更新審査用に提出した記録リスト。無事、受理されました!


さらに、免許更新の一環として;

この一年で刑事沙汰になるようなことをしなかったか、身体的・精神的に、国民や患者さんへ危害を及ぼすような疾患を抱えていないか、英国で薬剤師として働くのに十分な語学力があるか、といった質問事項にも、ウェブサイト上から、全て問題ありませんと自己宣誓をし(例:写真下⬇︎)

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257 ポンドを、クレジットカードにて支払いました(写真下⬇︎)。英国の薬剤師は、免許者名簿に自分の名前を載せるために、毎年の「登録料」たるものが必要なのです。

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これで、今回の更新手続きそのものは終了。

現時点で「免許更新審査待ち」の状態です(祈)

 

それから、薬剤師賠償責任保険の継続支払いも行なった。

英国の薬剤師は「自分の免許は自分で守る」という考えが強い。それから、本業以外にも、週末とかに本業とは異なる薬局でアルバイトする人も多いため、万が一の場合を考えて、ほぼ全員が、民間の薬剤師賠償責任保険に加入しています。

ちなみに私は、Pharmacists' Defence Assosiation (通称 PDA) という団体のもの(リンク下⬇︎)に加入しています。今回、こちらのウェブサイト上から年間保険料 168 ポンドを払いました。

The PDA - The Pharmacists' Defence Association | Defending your reputation

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私の今月末までの「薬剤師賠償責任保険」証書。来月から (2019/20年度) のものは、もし万が一の場合、損害賠償金約10億円、法廷弁護費約7000万円相当が支払われるものにアップグレードした。

 

以上が、英国薬剤師としての、最低限の必要経費。

いやー、お金が吹っ飛んだ月だった。。。 今月は一応、自身の誕生月でもあったんだけど(笑)

 

ついでに、英国薬剤師としてのその他の経費も、今回、紹介してみる。

私は、英国王立薬学協会 (Royal Pharmaceutical Society、通称 RPS) の会員になっている(リンク下⬇︎)。その会員費に年間 212 ポンドを払っている。英国の薬剤師は、お金に対してシビアな人が多く、この出費を惜しみ、会員になっていない人が、たくさんいる。でも、私は、以前、この協会の出版部にインターンとして在籍したことがあることと、そこから発行・配布されている会員薬学誌「The Pharmaceutical Journal (通称 PJ) 」が、英国の今を知る情報源や、卒後教育の手段として非常に有用であると感じているため、ずっと会員になっている。

で、今回の免許更新においては、こちらの会員になっていたことが、功を奏した。上記の、この協会から発行されている薬学雑誌「The Pharmaceutical Journal」に、この「新免許更新審査制度」で必要とされる提出物に関して、どんな内容を網羅すればいいかなどが分かりやすく解説された記事を見つけた。そして、こちらの協会のウェブサイトにも、その記述の具体例がたくさん掲載されており「あー、こんな風に書けばいいんだ」という、一定の基準が掴めた(写真下⬇︎)。さすがは、英国薬剤師の職能代表団体。会員になっていて、本当に良かった。。。

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今回の免許更新審査のための提出物の用意に、英国王立薬学協会からの資料がとても役に立った

 それから、私、今年からは、英国臨床薬学会 (The UK Clinical Pharmacy Association) の会員にもなろうとしている(リンク先⬇︎)。そうすれば、今後、年間 70 ポンドほどの会費が必要となる。

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「The UK Clinical Pharmacy Association (英国臨床薬学会)」の入会申込書。こちらの会員になることは、私の今年の職業的目標の一つ

 

で、今年度、私が英国薬剤師であり続けるための維持料とも言うべき額は、年間(最低)で;

英国薬剤師免許登録料= 257 ポンド+薬剤師賠償責任保険料= 168 ポンド+王立薬学協会会員費= 212 ポンド+英国臨床薬学会会員費= 70 ポンド= 総額 707 ポンド (日本円約10万円程度)

と算出されました。

 

その点、日本の薬剤師免許の維持は、すごく楽ですね。私、ほぼ 25 年前に免許取得したのに、未だに問題なく、厚生労働省の「薬剤師名簿」に載っている。しかも、こちらの方は、必要経費は「ゼロ」。文字通り、全て無料だ。。。

本当に、有難いことです。

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私の日本の薬剤師免許証。ロンドンの自宅の「貴重品入れ」に大切に保管しています。ちなみに私、日本では「衛生検査技師」の免許も持っている。薬剤師の免許を取得すれば、自動的に衛生検査技師にもなれた最後の年(?)の試験合格者だったらしく、慌てて申請した記憶がある。でも結局、その免許は未だに一度も使用したことがない。あはははは。。。

 

そういえばね、英国の薬剤師には「免許証」って紙の公的証書で発行されていないんだよ。今回のブログエントリの内容のように、年に一度の登録更新制になっており、薬剤師免許を取得しても、毎年更新審査をパスしていかないと除名されるシステムになっているから。雇用者や国民は「免許統括先であるGPhC のウェブサイト上の現薬剤師名簿に名前が載っている」ことで、随時、その薬剤師の免許状況を確認している。

 

では、また。