日英薬剤師日記

イギリスの国営医療(NHS)病院で働く、臨床薬剤師のあれこれ

見知らぬ街の薬局を訪れてみた(でも、なんと半分以上の薬局が閉まっていた)。スペイン・タラゴナ編

 

この2週間ほど、夏休みを取っていました。

母が約20年ぶりに英国へやってきて、ついでに一緒に、スペインへも旅行しました。

 

という訳で、今回のエントリは、スペイン・タラゴナの薬局を訪れた記録。

「英国でファーマシーテクニシャンの職を得た時の話」シリーズは次回から再開です。

 

タラゴナは、スペイン・バルセロナから列車で1時間ほど西へ向かった海岸沿いの街。20代の頃、一人で世界中を旅していた際、偶然「見つけた」。そして、とても気に入り、いつか再訪してみたいと(ずっと)願っていた場所。

この街のシンボルは、紀元1世紀に建てられた、写真下(⬇︎)の「円形劇場」。タラゴナは、ローマ時代に交易で栄えた街として知られており、街の至る所に、このような遺跡が散らばっている。

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ここ、約20年前に訪れた時は、まさに廃墟と呼ぶにふさわしい場所で、どこでも自由に歩き廻れた。でも現在は、世界遺産にも登録され、鉄骨の歩道が造られ、アクセスできるところも限られ、小綺麗に観光化されてしまっていた。それが、ちょっと残念だったな。。。

そして「地中海のバルコニー」(写真下⬇︎)と呼ばれるほど、海が美しく見える、とても素敵な街です。

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で、この街の観光がてら、いつものことながら、「見知らぬ街での薬局訪問」をしてみたのですが;

薬局、なんと数十メートル毎に所在する割には、平日にも関わらずほぼ全て、真昼間から「閉店」している(写真下⬇︎)、という珍現象に遭遇。

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「閉店薬局」その一

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「閉店薬局」その二


最初は「この街、倒産する薬局多いんだな。薬局の数もやけに多いし、競争も激しいんだろうな」なんて思っていたのだけど、次第に、そのあまりの「閉店薬局」の数の多さに呆然。

そして、開店している薬局があっても、どうもお客さんの数も少なく、観光者の私にとっては、入りづらい雰囲気。。。。

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開店している薬局も、閑散としている。。。

そして、街の中心地のかなりの数の薬局を巡った後、とある薬局の前に来て、この表示を見つけた(写真下⬇︎)

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とある閉店薬局前で見つけたこの案内表示。。。

 で、よーく見て(写真下⬇︎)、

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え? 3時間の昼休み。。。。!?!?

 

「あっ! 薬局が閉店しているのって。。。『シエスタ』だからだ!!!」

と、(そこで、ようやく)分かった。

 

バルセロナなどの主要観光地では、現在、シエスタの影響は(ほぼ)ない。でも、このように小さな街だと、薬局も「昼」と「夜」の2シフト制になっているのだと、今回、シエスタが生活様式とされている国の薬局経営を目の当たりにした。

「タラゴナ、倒産する薬局が多い街なんだな」なんて、本当に失礼でした。。。(謝)

以前、スペイン・バルセロナの薬局を訪れたときのエントリは、こちら(⬇︎)からどうぞ

 

でもねえ、それにしても、この街、シエスタ時間中は、薬局のみならず医療サービス全体が機能していないようだった。一般病院(写真下⬇︎)の前も通り過ぎたけど、患者さん人っ子一人いなかったようだったし。。。

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その病院の前の車道向かいの「門前薬局」(写真下⬇︎)も静まり返っていた。

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気を取り直し、この街の郊外にある「悪魔の橋」と呼ばれる、ローマ時代からの水道橋の遺跡(写真下⬇︎)を訪れた後で、薬局巡りを再開することにした。

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この水道橋のある山から下山する途中、母と共に道に迷い、通りがかりのスペイン人アスリートに「救出」されるというハプニングも起こった。。。。 旅にアクシデントはつきものですね(苦笑)


水道橋からの帰り道のバスの車窓からも、地域の多くの薬局が(まだ)閉店していることを垣間見(写真下⬇︎)、

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再び街の中心地へ戻ってきた午後5時半頃から、ようやく街中の薬局が開店してきたようでした (写真下⬇︎)。英国だったら、この時間帯「終業時刻」だよー(笑)

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夕方になって、人の往来が激しくなり、街が活気づいてきたら、薬局も開店しだした

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この薬局を通り過ぎた時点で、午後6時半だったことが、この写真から見て取れる。スペインの薬局は、薬局のマークを表す緑十字のネオンに、時刻や気温、日時の表示もされるものが多い

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上の時間表示がされていた薬局の真向かいに、遊歩道を挟んで所在していた薬局(→緑十字が見える)。スペインには、薬局の立地制限がなさそう

 

そういえば、この街には、チェーン店薬局らしきものがなかった。全て個人経営の薬局だったな。

 

かれこれ10年ほど前、西ロンドンの精神科専門病院でファーマシーテクニシャンとして働いていた頃、スペイン人の若くてファッションモデルのように美しい薬剤師と一緒に働いたことがある(注釈下)。彼女から、スペインでは多くの薬剤師が、免許取得後、自分の個人薬局を持ちたがる、ということを教わった。でも、その開局には多額の資金が必要とのことで、それ故に彼女は英国へ「出稼ぎ」に来ていたのであった。「スペイン人の年配のお金持ちと結婚したい。自分の夢の薬局の出資者になってもらう」と笑いながら話していたことを、今回の旅の最中、ふと思い出した。

彼女は今、スペインの何処で「夢の薬局」を営んでいるのだろう? シエスタのある街でであろうか?

EU圏内の薬剤師免許は(一応)全加盟国共通のものであるとされています。スペインの薬剤師免許を持つ者は、英国内でのわずか1ヶ月の「仮免許・試用期間」を経て、すぐに正式に働くことができます。そんな事情は、過去のこちらのエントリ(⬇︎)もどうぞ

 

では、また。

 

<番外編>

「勝手に観光大使」ですが、タラゴナ、個人的に、またいつか再々訪したいほど、お勧めの街です。下の写真(⬇︎)は、街の中心地の大聖堂の回廊に面した中庭。恐らく、今まで訪れた世界中のどの「庭園」より、静寂で美しい場所。

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