日英薬剤師日記

イギリスの国営医療(NHS)病院で働く、臨床薬剤師のあれこれ

新型コロナウイルスが猛威を振るう中、英国内外出規制期間、私がやった10のこと

 

目下、英国では、新型コロナウイルスが猛威を振るっている。私、3月下旬から4月の上旬にかけて、英国外での2週間の休暇を予定していたのだけど、残念ながらキャンセルせざるを得なかった。国内の休暇に急遽変更しようとも考えたのだけど、行き先を決めかねているうちに状況はみるみる悪化し、なんと3月23日からは、外出規制まで発令。

結論として、この約2週間、ほぼ誰とも会わずに自宅で過ごした。という訳で、今回のエントリでは、私が「ロックダウン」中にやった10のことを書いてみます。

 

(1)ひたすら自宅の掃除をした

今回の休みを利用し、部屋の隅々まで掃除。普段はしない、クローゼットの裏側の埃を取ったりとか、冷蔵庫の中とかも徹底的に。

皮肉にも気候は良くなってきたので、太陽の日差しを浴びながらの掃除は、とても気分の晴れる仕事となった。そうそう、英語で「大掃除」って「Spring Cleaning」って言うしね。

ご近所さんたちも、同様のことをしているみたいでした(写真下⬇︎)。今回のロックダウンは、英国全体に「風水」効果があることを期待します。

f:id:JapaneseUKpharmacist:20200331032758j:plain

私の現在の住処の住人さんたち一同でシェアしている清掃グッズ置場。特に右下の「ヘンリーくん ('Henry' : 独特なデザインで有名な英国製掃除機) 」は、今回のロックダウン時、常に誰かに使われており、大変な人気者でした

(2)断捨離をした

大掃除をした勢いで、断捨離もした。私、元々、所持品が(ものすごく)少ない人。でも、現在の自宅に引っ越してきてからちょうど5年目ということで良い節目だと。やり出したら、時間制限がないことをいいことにハマり、大型のゴミ袋5つ分ぐらいの物を処分した。

英国王立薬学協会から発行されている薬学雑誌の記事のファイルとかも全面アップデート。昔のメールとかもごっぞり整理。

特に3月の下旬は、英国中で食料や日常品が欠乏し、物流もほぼ止まり、「戦時中」ってこんな感じだったのでは? という疑似体験もした。特にこの期間、買い物に規制がかかった分「断捨離」の「断」部分でも、ものすごく効果があったものになったと思います。

f:id:JapaneseUKpharmacist:20200331034812j:plain

ゴミ捨て場も住居ビル内なので、一切外出しませんでした

 

 (3)よく寝た

この過去2年間、通勤に毎日3時間ほど取られており、よく考えたら、睡眠時間をまともに取っていなかった。そんな私が、毎日平均9−10時間寝ていた。正に人生の春休みだったなー。約1ヶ月続いていた風邪もここで完全に治り、体調がすこぶる良くなりました。

私がこの過去2年間やっていた仕事にご興味のある方は、こちらのエントリ(⬇︎)もどうぞ


 (4)友人たちと電話で、長時間話した

私、元々、テレビを観ないので、世の中の情報に一歩遅れているところがある。そんな最中に、心ある友人たちから次々と連絡が来たのが、嬉しかったです。

ほんの数例ですが;

英国の3大ホメオパシー薬局の一つに勤務する日本人薬剤師の友人、今、本当に大忙し。毎日、店に入りきれないほどのお客さんが溢れ、そのあまりのパンク状態に、ウェブサイト販売も一時閉鎖せざるを得なくなってしまったほどなんだって。でも、そんな最中でも私のことを思い出してくれ、電話をかけてきてくれた。そして今の時期、皆が喉から手が出るほど欲しいであろう彼女のお店の商品の数々をギフトとして郵送してくれた(写真下⬇︎)。涙が出た。

f:id:JapaneseUKpharmacist:20200401185753j:plain

小包の中には、特別に調剤されたレメディも入っていました。友人の愛に感謝です

こちらの友人、職業柄、現時点でもまだロンドンの中心街に通勤しています。その様子は、彼女のこちらのブログ(⬇︎)からもどうぞ

 

ロンドン近郊の国営病院に勤務する日本人薬剤師(→私の弟分のような人)は、彼自身、夜勤当直中で大惨事に対応しながらも「大丈夫ですか?」と。「有給休暇中で、毎日ぐでぐでしているよ」と返すと、「英国人万能科学者アイザック・ニュートンは、ペストの流行中での自宅待機中に大発見をした」とかいう話をしてくれた。真夜中の電話で、いいこと聞いた。

話が脱線しますが、英国病院薬剤師の当直勤務にご興味のある方は、私の過去のエントリ(⬇︎)もどうぞ。ちなみに、その晩、こちらの友人は、薬局内の医療用冷蔵庫が故障したために、緊急出動していたとのこと。ひえーーーーーっつ!

 

(5)職業関係で必要な知識の復習をした

これが、今回の休暇中、最大の収穫でした。いつもは日々、次から次へとやって来る患者さんの治療に追われ、知識の吸収は、断片的にしかできない。それはそれで、即効性のある勉強法で悪くはないと思うのだけど、今回、この自宅待機期間を最大限に利用し、特に感染症総論を総括的に復習。しかも、静かな環境で、紅茶とかをすすりながらね。至福の時だった。

前回のエントリ(⬇︎)にも書きましたが、ロックダウン直前に、新しい書籍を購入したのも幸いしました

特に良かったと思うのは、元からお気に入りのこちらの本(写真下⬇︎)。全巻、隅から隅まで読み直しました。

f:id:JapaneseUKpharmacist:20200401015350j:plain

普段はできない勉強時間が取れたのが最高でした。でも、その一方で、一時期、紅茶に入れる牛乳とかすら全く入手できない日が続き、辛かった。あまり好きではない豆乳で代用していたけれど、これも、売り物が殆ど無くなってしまったがらんどうのスーパーマーケットの在庫で最後の一本だったものを購入したぐらいに、日々の生活は緊迫していました

(6)ずっと読みたいと思っていた本を読み、ずっと観たいと思っていたDVD を存分に観た(写真下⬇︎)

f:id:JapaneseUKpharmacist:20200401011809j:plain

「ER」を何年かぶりに観た。

アマゾンプライムを利用して「The Kennedys (ケネディ家の人びと) 」という米・加共同合作のドラマシリーズも観た。ずーっと前から興味を持っていたもの。

それから「トムとジェリー」のエピソードをエンドレスに観た。私、幼い時からこのアニメーションの大ファン。こういった時期を乗り切るには、はちゃめちゃな笑いは絶対に必要。

本に関しては、本田健さんの「40代にしておきたい17のこと」とか、いい女.bot さんの書籍版「Love, Gorgeous and Elegance」などを読み返してみました。

 

(7)日本の薬局会報誌に記事を一本書いた

長年とても懇意にしている編集長さんとのお仕事で、英国の医療・薬局事情に関する記事を定期的に寄稿している。次号は「新型コロナウイルスの英国の状況」というテーマでとの依頼を受けていた。これからまだまだ続く話題になると思うけど、一応、現時点での「英国の現状」の原稿を書いた。

このお約束があったため、今までこのブログに、新型コロナウイルスの話題については書かないできた(→先方から強制された訳ではなく、単に未公開の情報を提供したいと思い)。原稿がある程度仕上がったため、その内容と重ならない角度から、今回のブログのエントリも書いてみました。

 

(8)今まで後回しにしていた家事とか、事務処理をした

太陽の日差しをさんさんと浴びながら、取れかかっていたボタンつけとか、ズボンの裾をまつったりとかした。それから、いつも使用しているスーパーマーケットのメンバーズカードの特典ポイントの使い道を調べてみたら、今回の新型コロナウイルスで被害を受けている方々への危機救済総括団体 (The National Emergencies Trust) へ寄付ができることを知った。蓄積されていた500ポンド相当(?) を、そちらへ送りました。

こういったことも、普段の生活で、朝から晩まで働きづめだったら、忙しさに紛れて気づかなかったはず。人生の時間に余裕があるのって、本当に大切なことだと、この外出規制中に、身に沁みて感じました。

 

(9)エンディングノートを書きはじめた(写真下・右⬇︎)

f:id:JapaneseUKpharmacist:20200401025350j:plain

数年前、日本へ里帰り帰国した際に購入し、すっかり忘れていた「エンディングノート」を取り出してみました

英国国営医療サービス (NHS) のスタッフの中にも、犠牲者が出てきていることを聞き知って。大げさなものではなく、持っている銀行口座をリストにしてみたり、英国国営医療サービス(NHS) 従業員の死亡一時金受け取りの手続きとかを詳細に調べた(→受取人をきちんと指定しないと、国家公務員ということで国に没収されるらしい。ひょえー!)。私は、日本国籍だけど、英国に長年在住していることもあり「もし、この世での自分の命がここで終わることになったら」ということを、他の人よりはよく考えている方だと思う。

仮想ではあるけれど、置いていく者たち、何かしら残るであろう物品、必要になる事後処理などに思いを巡らせるいい機会になった。写真上(⬆︎)の左のパンフレットにある「Pharmacist Support」は、元々、英国王立薬学協会内の部署の一つであったもの(注:現在は、独立した慈善組織になっています)。薬科大学生で経済的困難やストレスに晒されている者や、大黒柱であった薬剤師の死亡により経済的に窮地に陥っている家族たち、薬物中毒に陥ってしまった実務薬剤師たちなどを救済している団体。英国薬剤師たちの間で、遺産を残すことが多いことで知られている。そんなチャリティーについても、今回ちょっと調べてみました。

そうそう、20-30代の頃は、東京・御茶ノ水にある語学学校「アテネ・フランセ」に、海外で勉強をしたい人へ何らかの奨学金を出せるような組織を作りたいと考えていたっけ。私にとって、人生のターニングポイントとなった場所だったから。「財団を設立できるぐらいの(偉い)人になってね」と言って、私の英国留学準備を一貫して手伝ってくれたそこの先生だった人のことも、ふと思い出した。この約束を果たすのは、まだ程遠いなあ(笑)

そんな、昔の記憶を辿る、愛おしい時間にもなった。

 

(10)このパンデミックが収まってからやりたいことのウィッシュリストを作った

(9)を読んでびびっている人もいらっしゃるかと思うので念のため言っておきます。私は、生きる意欲満々です。現在の状況が収拾した時に、何をやっていいのか分からない人になってしまっていないように、目下「やりたいことリスト」をせっせと作成しています。

例えば、本来であれば、今月中旬から予定していた集中治療室での実地訓練を、将来できるだけ早くやりたいとか、母が一緒に行きたいと言っていたバリ島での休暇の計画とかね。それから、最近ロンドン科学博物館に移転したウェルカム財団所有のヴィクトリア朝薬局を訪れてみるとか、京都・祇園の1年前からでも予約が取れないという料亭「未在」に行ってみたいとか。数年後には処方薬剤師の免許を取りたいとか、感染症の分野での何らかの系統立った卒後教育を受ける、といったものもリストに入れた。こういったウィッシュリストを、常に100こぐらい持っている人になりたい。

そんな訳でリストを長々と書き出していたら、休暇中にも関わらず、職場の集中医療室主任薬剤師の先輩からメールが来た。この新型コロナウイルス感染の拡大により、英国の急性病院のシニア級以上の臨床薬剤師たちは全員、集中医療室での薬剤治療に一通り精通せよ、ということになりつつあるとの知らせだった。英国王立薬学協会が、早急にウェブ上で卒後教育セミナーを開催する(⬇︎)ので、それで学習するのがまず第一歩だと。

f:id:JapaneseUKpharmacist:20200331220714p:plain

早速、この英国王立薬学協会による「集中治療室の薬剤治療の基本」のオンラインセミナーに参加しました

 

紙に書き出すと、それが本当に現実になるって、よく言われているよね。私も、今回、それを信じるようになりました。

 

でも。。。私が、有給休暇中で自宅待機している間に、英国の医療現場前線の状況は、確実に深刻化してきています。 

 

では、また。