日英薬剤師日記

イギリスの国営医療(NHS)病院で働く、臨床薬剤師のあれこれ

見知らぬ街の薬科大学を訪れてみた。英国ケント州メドウェイ薬学校

 

先月5月の終わりは「バンクホリデー」だった。

祝祭日の少ない英国のカレンダーで、土・日・月が休みとなる、嬉しい週末。

 

しかも、今回のバンクホリデーは、新型コロナウイルス (COVID-19) の蔓延で、英国内で5ヶ月の長きに及んだ、3回目のロックダウン(国内封鎖)を解除してから、最初の連休。

英国で最も気候の良い、大好きなこの初夏の季節、どこへ行こうかなあ・・・・? とワクワクしながら計画を立て、ここ(⬇︎)へ行ってきた。

1泊2日の(格安)旅行を、ここにレポートしてみる。

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英国鉄サウスイースト線メドウェイ市チャタム駅

メドウェイ (Medway)(写真下⬇︎)は、ロンドンから電車で1時間ほどの、英国南東部ケント州の河口の市。地理的に入江になっており、海にも繋がっているため、歴史上、造船業と海軍の要所として知られてきた場所である。

ちなみに、日本に来航(漂着)した最初の英国人とされるウィリアム・アダムスは、16世紀にこのエリアで生まれ育ち、造船場の丁稚として人生をスタートした人として語り継がれている。

後に航海士となり、日本に流れ着いた後は、三浦按針という日本名となった「英国人サムライ」は、徳川家康の命を受け、日本初の洋船を静岡県伊東市で造った。彼の生涯と業績を讃え、現在、メドウェイ市と伊東市は、国際友好市になっている。

個人的な話だけど、私の親戚の一家が、伊東の海の目の前に在住している。そのため、私にとって、子供の頃の夏休みといえば、そこで毎年催される「按針祭」と呼ばれるパレードや花火大会を、いとこたちと揃って観る賑やかさに象徴されていた。

そんな遠き日の、懐かしい思い出と共に、この街を訪れることになりました。

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英国ケント州メドウェイ市の入江

 

ところで話ががらりと変わりますが、英国では、医師以外の医療従事者でも、薬の処方をすることができます。薬剤師、看護師、理学療法士、足治療専門師、検眼士、放射線技師、救急隊員などへ与えられる国家資格となっています。

国内の大学院で開講されている6−9ヶ月のパートタイムのコースを受講しながら、各自の職場で実地訓練を積むことで、その免許を取得できます。

で、私、近々この免許を取得したく、目下、どこの大学院へ入学しようかとリサーチ中。

 

ここメドウェイ市には、薬科大学が一校所在する。

その名も「メドウェイ薬学校 (Medway School of Pharmacy) 」。

2000 年代中盤に開校された新設薬科大学の一つであるが、著名な教授や薬局実務に強い講師が多く、年々人気が高くなっていっている。

英国の薬科大学は、大別して3種に分かれます。そのカテゴリーにご興味のある方は、過去のこちらのエントリ(⬇︎)もどうぞ

特に卒後教育のコースで、評判の良いものを提供している。その際たるものとして、こちらの薬学校は、英国で数年前からはじまったばかりの「臨床強化独立処方薬剤師コース (Clinically Enhanced Pharmacist Independent Prescribing Course) 」を、全国に先駆け開講した薬学校としても、大きな話題となった。

この「臨床強化独立処方薬剤師コース」とは、ただ薬の処方をするだけの役割に留まらない、臨床診断技術を持つ薬剤師の育成を目的としたもの。「次世代の臨床薬剤師の姿」として、今、英国薬剤師の間では注目されている。欧米のナースプラクティショナーの薬剤師版といった位置付けと例えられるかも。

私の職場でもすでに、副薬局長の一人と、私がとりわけ尊敬する先輩薬剤師の一人が、ここメドウェイ薬学校で処方薬剤師免許を取得した。2人からも「コース内容と構成が、抜群に素晴らしかった」という感想を聞いた。

それで、今回、私自身も、休暇がてらこちらの薬学校を訪れ、入学の可能性を探ってみようと考えた次第。

 

でですね。。。。

今回、私自身、ほぼ何の前知識なく、ロンドンから電車とバスを乗り継ぎ(ひょっこりと)こちらの薬学校を訪れてみた訳ですが;

大学キャンパスの正門(写真下⬇︎)へ到着し、まずびっくり。

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あらまあ、立派な門👀! ここ、英国王室の元所有地? 米国東海岸の大学キャンパスのような風格でもある

 

門をくぐり、さらにびっくりしました。一直線の整然とした道に、美しい伝統的なレンガの建物が連なっていたのです。

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多くの学科を有する大学のようです

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キャンパス全体が、全てこのような赤レンガの外観の建物で、統一されていました

そして、キャンパス内のこのような(写真下⬇︎)場所に来て、ピンときました。

あれ? ひょっとしてここ、元は、軍事関連の跡地だったんぢゃない? ってね。

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その昔、ここで士官たちの訓練が行われていたのだろうなという雰囲気が伝わってきた場所。現在は、大学図書館として使用されているようです

そしてよくよく見ると、このキャンパス内の校舎の建物には全て、英国戦史上の名将と言われる者たちの名前が、それぞれつけられていることに気づきました。

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こちらの校舎は「ネルソン」。仏ナポレオンとの海戦で勝利した英雄ネルソン提督を冠しているのであろう

キャンパス内をだいぶん歩き、ようやく「メドウェイ薬学校」に辿り着きました。

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メドウェイ薬学校校舎

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メドウェイ薬学校正面玄関。ちなみにこちらの建物は「アンソン」という名称だった。18世紀の海軍元帥だった人だそう

 こちらのキャンパス敷地内の裏手には、学生寮(写真下⬇︎)もいくつかありました。

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英国の大学の近代的な学生寮の典型的外観

 

こちらの大学キャンパス訪問後は、そこから徒歩圏にある埠頭マリーナ(写真下⬇︎)にやってきました。

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周辺は近代的なショッピングモール(写真下⬇︎)や、カフェ、レストランが立ち並び、ロンドンからの気軽な小旅行先として、理想的な場所でした。

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その晩は、この埠頭マリーナ沿いのレストランでディナーをしました。この街で No. 1 のインド料理店(⬇︎)とのこと。確かに、すごく美味しかったです。

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英国の薬剤師はインド系が多い。よってこのレストランは、ここで学ぶ多くの薬学生にとって行きつけのお店のはず

 

ここの「メドウェイ薬学校」を選んだ場合、楽しい学生生活を過ごせるような気がしました。

 

この旅の話の後編は、次回に続きます。

 

では、また。

 

<番外編>

今回、1泊2日の旅で宿泊したホテルはこちら(写真下⬇︎)。

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英国の格安チェーンホテルの代表格「トラベロッジ」

メドウェイ薬学校キャンパスのまさに正門前に所在していたため、今回初めて使用してみましたが、なかなか良かったです。

このような全国チェーン系ホテルを最大限に利用し、英国内の薬学校をその地の観光がてら訪れ、それを(ゆるーく)レポートするというシリーズを、今後このブログでやっていこうかなというアイディアが、ふと閃きました。

全国制覇は、何年もかかりそうだけど。。。乞うご期待(笑)。

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ベーシックではあるけれど清潔なお部屋で、ホテル内での朝食をオプションで頼んでも(→この写真にあるものは前菜で、典型的なイングリッシュブレックファーストがメインで提供された)一泊一人当たり日本円4500円程度の、お財布にとても優しい宿でした