数日前、ロンドン在住の日本人の親しい友人 H さんと連れ立って、日帰りの旅をした(写真下⬇︎)。
私の日英薬剤師としての弟分的友人 D くんが、最近購入したマイホームに招待してくれたため。
でね、
今回集まったメンバー(写真下⬇︎)の共通点は;
「英国の薬局・病院で、バリバリ働いている日本人薬剤師たち」(笑)。
電話とかでは、しょっちゅう連絡を取り合っている間柄だけど、この3人が一同に会すのは、ほぼ2年ぶり。新型コロナウイルスの影響とかもあったりでね。
基本、非社交的な私の、この貴重な友人たちについては、過去のこちらのエントリ(⬇︎)でも、少し紹介しています。
そんな訳で、この日は、D くんの新居にて、可愛い息子さんのお出迎えと奥さまの心温まるおもてなしを受けながら、在英日本人薬剤師たちの積もる話が延々と続いた。
その会合の中でね、私、以前から2人に聞いてみたかった質問を、いくつかしてみたの。
今回のエントリでは、それらの質問と2人の回答を、自身の答えと共に載せてみることにします。
これぞ、英国でも希少な「在英日本人薬剤師たちへの独占インタビュー」ですぞー(笑)
Q 1. 現在の英国での職は?
D くん:ロンドン近郊エセックス州の国営医療 (NHS) 大学病院薬剤部の、品質管理部門の主任薬剤師
H さん:ロンドンの中心街コベントガーデンにある、英国3大ホメオパシー薬局の一つに勤務のホメオパス。個人でクライアントさんも診ています。
私:南ロンドンの国営医療 (NHS) 大学病院の、感染症専門臨床薬剤師
Q 2. 英国へ移り住んだきっかけは?
D くん:英国には、日本にない「薬剤師が、医師から独立して、薬の処方をできる資格がある」と聞き知って。で、まずは、英国の薬剤師免許を取得すべく、海外薬剤師免許変換コース (OSPAP) を履修しようと渡英した。
H さん:ホメオパシーを本場で学びたく、英国の学部生と同じルートで、3年間の大学コースに入学した。
私:海外の薬剤師実務を知りたく、ロンドン大学薬学校大学院の、臨床薬学・国際薬局実務&政策修士コースに入学した。
Q 3. 日本の薬科大学を卒業してから、英国へ来るまでの道のりを教えて
D くん:大手調剤チェーン薬局に入社したが、転勤が多く、全国各地を転々とした。薬剤のことにあまり精通していない開業医の門前薬局のようなところで働いていた時、気づいたら、先生の処方業務を(ほぼ)肩代わりしているのでは? という状況になり、それで、英国の処方薬剤師に興味を持った。でも、英国の薬剤師免許の変換に必要な英語の語学試験 IELTS になかなか合格しなかった。記憶に残っているだけでも、18回受験したな。いや。。。もっと受験したかも(爆笑)。
英国薬剤師免許への変換で最初の関門となる英語の語学試験 IELTS については、こちら(⬇︎)のエントリもどうぞ
H さん:東京郊外の良心的な病院の薬剤部とその近隣の調剤薬局をローテーションするというユニークな職種の薬剤師として10年ほど働いた。でも激務で、人生で本当にやりたいことを見失っているように思えた。一旦、自分自身をリセットすべく、英国に語学留学した。その期間に、ホメオパシーに出会い、英国の大学に入学することにした。
私:西東京のキリスト教系の病院で5年半、薬剤師として働いた。当時の日本は、ようやく臨床薬剤師業務が開始された頃で、国じゅうでどのようなことをやっていくのかを模索していた時代。この分野で教わることができる人が身近におらず、限界を感じた。元々、海外の薬剤師事情に興味があった。英国で実践的な臨床薬学を学べるコースが見つかったので、一年の予定で留学することにした。
私が、日本で病院薬剤師として働いていた頃の話は、このエントリ(⬇︎)もどうぞ
Q 4. どうして、英国に住み続けているの?
D くん:今のところ、日本で薬剤師としてやりたいことが、具体的に思いつかない。英国の薬剤師のキャリアには、実にさまざまな選択肢がある。
H さん:ホメオパシーの歴史のある国の最前線で、経験豊富な専門家の先達や同僚たちと働き、高いモチベーションを保てる環境にいる。
私:臨床薬剤師として、世界中からやってきた医療従事者たちとチーム医療の中で共に切磋琢磨できる、ダイナミックな職環境が気に入っている。
Q 5. (英国に移り住んでから)これまでの、自身の最大の達成は?
D くん:英国薬剤師免許試験に合格したことかな。嬉しくて、ネット上で発表された自分の名前を3日ぐらい、恍惚状態で見続けた。
H さん:薬剤師という地位・肩書きに頼らず、ホメオパスとして、自分を確立してきたこと。
実は、これ、英国の就職・転職面接試験でよく聞かれる質問の一つ。で、2人のことを(ある程度)知る、私の予測では;
D くん:日本人薬剤師として、最速で、英国の国営医療 (NHS) 病院の主任薬剤師になった。
H さん:入局の極めて難しい狭き門の英国3大ホメオパシー薬局の一つに、日本人として非常に稀に就職できた。その上、数年後、同僚たちからの投票で「功労賞」をサプライズ受賞(リンク⬇︎)した。
これ、すごく感動した話なので、詳細は是非、H さんのブログのこちらのエントリ(⬇︎)もどうぞ
といった事例が挙げられるだろうな、と思っていたのだけど。。。
その予想は、見事に外れました。
そして、2人の口から語られる言葉に耳を傾け、つくづく謙虚な友人たちだなあと、と尊敬の念を新たにしました。まさに「実るほど、頭を垂れる稲穂かな」。でもね、実際には、こんなにすごい実績のある方たちなんですよっつつつ!!!。
ちなみに、私自身の答え(→転職の面接試験とかの際に、いつも用意している模範回答。笑)は、
私:これまでいくつかの英国国営医療 (NHS) 病院で働いてきて、「最優秀雇用者賞」を複数回受賞している。でも「The Next One」(注釈下)。さらなる自身の成功や達成は、まだ未知の将来にあると信じている。
です。 2人に比べ、私はつくづく、俗世的で、虚栄心のある人間です(恥)。
(注)「The Next One」とは、英国人俳優・映画監督であるチャーリー・チャップリンの名言の一つ。記者たちから「あなたの最高傑作は何ですか?」と聞かれるたびに、「The Next One - 次回作です」と答え、過去の栄光に甘んじていないということを明言していた。ところで、話が逸れますが、私、チャップリンの大ファン。彼のロンドンでの幼少期の足跡を、医療の側面から辿ってみた時の記録は、こちら(⬇︎)からどうぞ。
Q 6. 英国へ来てから最大の困難は何だった?
D くん:英国薬剤師としての就職がなかなか決まらず、 ようやく決まっても労働許可ビザの入手に関し、次から次へと無理難題が降りかかった。実際、現在の職場で働き始めてから、人事課によるビザ手配の不備が発覚し、強制的に日本へ帰国させられたりもした。雇ってくれた病院の薬剤部も、途中で面倒臭くなり、ボクの代わりを雇おうとも考え始め、不安だらけだった。ビザの問題は、本当に悩みの種。人生を左右するものなのに、不確実性要素があまりに多いものだから。
H さん:英国の大学を卒業し、ホメオパスになってから、英国で2年間就業できるビザで暮らしていたが、その期間、ホメオパスとしての仕事は、なかなか思うようにいかなかった。進路に迷い、本来の薬剤師の仕事に戻ろうかと、ロンドン市内の日系医療クリニックに勤めた。その後、英国の現地薬局に就職したけど、それも大変な道だった。
私:英国の薬剤師免許を取得した年、英国の薬局業界が空前の就職氷河期となってしまった。ほぼ1年半、定職に就けず、将来の見通しがつかず、経済的にも精神的にも苦境に陥った。で、その期間に、ロンドン市内の日系医療クリニックで働いた。今振り返り、そこで働くことになったのは、神様が意図してくれた導きだったと感謝している。だって、それじゃなかったら、この素晴らしい在英日本人薬剤師の友人たちとも、出会えなかったであろうからね・・・!(注釈⬇︎)
(注)D くんも、H さんも、私も、ロンドン市内のこちら(リンク下⬇︎)の日系医療クリニックにかつて薬剤師として勤務し、そのご縁で今日まで親しくさせて頂いております。こちらの医療機関は、在英日本人医療従事者にとってのオアシスであり AKB48(笑)。応募者の大半が、何らかの理由で腰掛け的に在籍し、人生の次のステップを決めると、早々と退職していく。そんな者たちでも快く雇用して下さり、在英日本人医療従事者たちのネットワークにも繋がる、有難い機関です。
Q 7. 英国で働く利点を挙げるとすれば?
D くん:日本で薬剤師として働くより、容易に業績を上げやすい。個人へ与えられる仕事の権限も限りなく大きい。能力を正当に評価してくれる世界。
H さん:仕事とプライベートの境界線がきちんと分かれている。雇用者の権利が保障されている。ほんの一例であるが、日本は残業をする人が働き者の美徳とされているけど、英国はそういう風土ではない。
私:臨床薬剤師の仕事に関して言えば、無限の可能性が秘められていると感じている。
Q 8. 英国で暮らす上で、うまくやっていくコツ
D くん:郷に入れば、郷に従え。
H さん:私も、郷に入れば、郷に従え、かな。
私:失敗を恐れないで、とにかく挑戦し続けること。あと、何事に関しても自分の意見や価値観を持つことが大切かな。世界中から来た人たちが暮らしているので、常識というものの意味合いが、皆、まるで異なっているから。
Q 9. 英国で働きたいと考える方へのアドバイス
D くん:ボク、薬剤師って本当に良い職業だってことに、英国に来て再確認した。何よりまず、薬剤師の資格がなかったら、海外に移り住めなかったと思う。でも、成果が出るまで、相当な時間がかかることを念頭に置くべき。人生でリスクを負いたくない人には、不向きだね。それから、日本でどんなに経験があった人でも、英国の薬剤師としては、最初は一番下っ端から始めることになるので、覚悟しておくこと。でも、日本人は真面目だから、後から必ず評価されるようになる。日本では平均レベルの人でも、ここでは「超優秀な人」となるので、心配ない。
H さん:言葉の壁は、そんなに気にしなくていい。コミュニケーションの方法は多彩。ボディランゲージとかでも、十分意思疎通できる。それに今は、グーグルトランスレートで会話できるし(笑)
私:あくまで私自身の個人的な観点からの意見ですが、日本で薬剤師として働くのとは比べものにならないほどの職業的充実感が味わえますので、志のある方は是非! でも、その成功は、個々の努力や熱意のみならず、運や縁や準備資金調達額にも大きく左右されます。大胆に行動しつつ、失敗のリスクには、常に備えておくこと。
Q 10. 今後の目標は?
D くん:医薬品品質管理の頂点とも言える「Qualified Person」資格保有者を目指したい。
H さん:感性をより高め、イギリスで勉強・体験して得られるもの(日本ではなかなか得られにくいもの)を中心に、日々精進していきたい。クライアントさんが良くなっていくための、様々な技術の引き出しを増やしていきたい。
私:臨床薬剤師の道を、どこまでも、とことん極めたい。
今回のインタビューは、以上です。
このエントリの最後になってしまいましたが、H さんにご興味のある方は、こちら(⬇︎)が彼女の公式ウェブサイトです。
D くんについては、以前、以下のエントリ(⬇︎)でも紹介しています。
では、また。