日英薬剤師日記

イギリスの国営医療(NHS)病院で働く、臨床薬剤師のあれこれ

見知らぬ街の薬科大学を(散策がてら)訪れてみた。英国バース大学

 

先月の中旬、休暇を取っていました。

6ヶ月ぶりの、まとまった休みでした。

本当は、日本への里帰り帰国ができることを期待して、かなり前からリクエストしていた有給休暇だったのだけど;

新型コロナウイルス (COVID-19) の影響で、海外の渡航は、依然無理。

 

という訳で。。。

行き先は、もうここしかないよね。

英国唯一の温泉街「バース (Bath) 」。

一年前にも訪れたのだけど(リンク下⬇︎)、ここでは、絶対「癒し」が保証されるから(笑)。

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ロンドンから英国西部バースへ向かうこの新列車 (The Great Western Railway) 、あまりに乗り心地が良かったので、帰宅後調べてみたら、なんと日本の日立が造っていた。さすがです。

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バースの観光の中心地。紀元前ローマ時代から存在した街に、今なお人々がごく普通に行き交う

この街のシンボルと言えば「ゴルゴーンの首」(写真下⬇︎)。ギリシャ神話に出てくる怪人の顔のイメージが、ローマ時代に「魔除け」として広く使われていたことから。

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バースの街のお土産屋さんには、この「ゴルコーンの首」をモチーフにしたものがたくさん売られている

 

で、毎日;

スパ(温泉)に浸かり、

美味しいものを食べ、

よく寝ていた Zzz 。。。のですが、

休暇中、少しは運動をせねば、と思いついたアクティビティが、これ(リンク下⬇︎)だった。

 英国には「ナショナル・トラスト」という、自然や歴史的建造物を保護する団体がある。そこが国内の景勝地のウォーキング・マップを色々と出している。で、その「お勧めルート」やらを色々と調べていたら、バースの街の観光の中心地からバース大学所在地辺りまでが、モデル的な散策になる! と気づいたのだった。

で、早速、試してみることに。

 

スタートは、ここ。

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バースの街の中心を流れるエボン川とパルトニー橋。遊覧船も運行されており、川下りも出来ます

この橋に沿って、街の中心地から外れる方向の道を歩いていくと。。。

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変わった形のポストを発見。ちなみにバースは、世界で初めて「万人が利用できる形での郵便制度(=切手・郵便ポストの使用)」を始めた街であったことを、今回の旅でたまたま知りました

小さな公園にたどり着いた。この公園を突き抜けると。。。

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倒れた大木をそのまま子供の遊び場にしている公園

すぐ、運河となりました。

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うわー、絵に描いたような美しさだーーー😍!!!

運河沿いの、まるで秘境のような小道を歩いていくと。。。

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高級住宅地が突如現れ、運河に浮かぶボートで暮らしている人たちも発見。

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ある地点で、運河に架かる橋を渡り。。。。

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この写真の遠方に見えるのは、運河のロック(閘門)

緩やかな斜面のこの小道をひたすら歩き続けました(→この日は、英国の気候ではあり得ないほどの猛暑で、汗だく💦になったよ。笑)

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で、たどり着いた丘の頂上。ここ、バースで1ー2位を争う「絶景地」だとのこと。

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映画「サウンド・オブ・ミュージック」の1シーンのような光景に、思わず「The hills are alive ~ ♪」と歌ってしまいました(爆笑)

ここで小休憩した後は、このナショナル・トラストが推奨している「モデル散策ルート」を、少しばかり脱線し、

この丘の頂上と目と鼻と先にある、バース大学キャンパス(写真下⬇︎)へ行ってみた。

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バース大学 (University of Bath)。この大学の校章も「ゴルゴーンの首」となっている

こちら、薬科大学としては国内でもトップクラス。でも、今回訪れてみて、大学自体は、意外と歴史が浅い(写真下⬇︎)ことを知った。

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1966年創設の大学(薬学校としては 1907 年から開校していた)

バース大学は、英国内の大学の中でもかなり早い時期 (1990年代) から、オンライン学術データベースの充実化や書籍の電子化を推進し、高い評価を得た。よってこの図書館(写真下⬇︎)は、大学ご自慢の施設。

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一見コンパクトのように見えて、実は意外に広いキャンパス敷地。かなり歩き周り、ようやく「薬学部」を見つけました(写真下⬇︎)

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バース大学薬学部入り口

 

ところで日本では、大抵、偏差値というもので大学間の順位づけがされている(はず)。英国にも一応、大手新聞社などが発表している薬科大学のランキングがあるのだけど、これらは「薬学と薬理学 (Pharmacy & Pharmacology) 」という分野で一括りがされており、どちらかというと薬理学系での研究実績や助成金の獲得額での査定軸となっている。だから「実務薬剤師を育成する訓練校」としての甲乙が直に反映されたものとは言い難い。

ということで、ここで「私の独断と偏見による」英国薬科大学ランキングを発表。

(注:ちなみにこちら、私と一緒に過去働いた・現在働いている、従ってロンドン圏内の病院薬剤師たち限定の総合平均評価をベースにしたものであることをご了承下さいませ。それから英国の薬科大学は、2000年後半から新設校がたくさん開校し、それらのレベルがここ数年で急上昇していることも特筆すべき。あと、スコットランドとウェールズの薬科大学は除外しています)

 

第1位:ノッティンガム大学(英国中部)

不動の絶対的一位。英国最大手ブーツ薬局発祥の地に開校された薬学校という歴史的経緯からかな。。。? ここの大学卒業の薬剤師たちは、なぜかどなたも、他の大学出身の者たちとは明らかに異なる上品な雰囲気が漂っている。

第2位:マンチェスター大学(英国北部)

英国最古の薬科大学という、いわゆる「正統派」としての根強い人気。大学内に英国卒後薬学教育センター (Centre for Postgraduate Pharmacy Education, 通称 CPPE) の総本部を包していたり、市内には国内統一の医療ガイドラインを作成している NICE のオフィスが所在し、大学はそれらの予備研究・調査で提携していたりと、対外的な強みもある。

英国卒後薬学教育センター (CPPE) については、過去のこちらのエントリ(⬇︎)もどうぞ

第3位:ロンドン大学(英国首都)

キングスカレッジとユニバーシティカレッジを(一応)同順位とした。両校とも勉強熱心な「2世(=親の代で英国へ移住し、自身は英国で生まれた)インド系学生」が大多数の割合を占めるため、その分、レベルも底上げされている。

ロンドン大学は、たくさんのカレッジを包括する「大学グループ」であり、その中に薬科大学は2校あります。この説明に関しては、過去のこちらのエントリ(⬇︎)もご参照下さい。

第4位:バース大学(英国西部)

今回訪れてみた大学。薬学教育全般に定評がある。ロンドンから近く、一年を通じて気候が良く、美しい自然に囲まれ、かつ世界遺産に登録されている地に所在。街の中心地には英国の主要ブランドの店が全て集結し、カフェやレストランも充実し、学生生活に理想的な環境。だから以前は「生粋の英国人学生」の割合が高かった。

英国で(特にロンドンで)「生粋の英国人薬剤師」を見つけるのは、難しいです。そんな事情は、過去のこちらのエントリ(⬇︎)もどうぞ

 第5位:ブライトン大学(英国南部)

臨床薬学教育に強い。最近は、新設大学に押されがちだけど。。。(泣)。あと昔から社会人入学を積極的に受け入れてきたことと、学生に LGBT の割合が多いことも際立った特色。

私は、こちらの大学院で開講されている「海外薬剤師免許変換コース (Overseas Pharmacists' Assessment Programme, 通称 OSPAP) 」に1年間通い、日本の薬剤師免許を英国のものに変換しました。そのコースの詳細は、こちら(⬇︎)からどうぞ。

 

脱線してしまった話を戻し。。。

今回、バース大学薬学校を訪れて「あれ?」と肌で感じたのは、英国では再び、中国系の薬学生が多くなってきているのかな? ということだった。

というのは、私が英国へ移り住んだ数年前に、香港の中国への返還 (1997年) があった。そのため香港の裕福な家庭では、予測できぬ将来への不安から、子息を英国に留学させ、永住権を取得させようとする親御さんが多数いた。だから、2000年代のロンドンには、香港系中国人の若手薬剤師たちが大勢働いていた。でも、そういった者たちはあくまで「英国永住権取得」が目的であったため、英国である程度の期間働いた後は、薬剤師に見切りをつけ、コンサルとか金融界に転身したり、自分で事業を立ち上げる人が多かった。

よってここ数年、私の周りでは、中国系薬剤師を(めっきり)見かけなくなっていたのだ。だから今回、バース大学で見かけた学生たちが、何だかとても新鮮に映った。

 

バース大学のキャンパスも自然に溢れていた。

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大学キャンパス内に大きな池があり、そこを一周してみることに

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大学キャンパス内の池と噴水

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池の中には、鴨もたくさんいた。地元の人がエサをやっていた。かわいかったなあ。

 

大学キャンパス内を出、散策を再開。

10分ぐらい歩いたら、古城跡にたどり着いた。

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「シャム城 (Sham Castle) 」という面白い名の城跡

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この城跡前から、バース中心街を一望できた

後は、この絶景を横目に見つつ、急な斜面の丘を下山するような形で。。。

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このようなのどかな風景の民家も通り過ぎ

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しばらく歩くと、すぐ市街の見慣れた中心地に戻ってこれた。

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こちらの写真の薬局(⬆︎)を訪れた記録は、一年前のこちらのエントリ(⬇︎)もどうぞ


街全体が世界遺産で、歴史があり、自然に恵まれ、ほぼどこへでも歩いて行ける至近感が、バースの街の魅力です。

 

では、また。

 

<番外編>

そう言えば、同僚(後輩)のカーティス君(写真下⬇︎)が、バース大学の卒業生だった。

「どうして、バースを選んだの?」と聞いてみたところ、

「課外活動のスポーツが盛んな大学だったから」と。

カーティス君は、現在の私の職場の薬局内では絶滅危惧種とも言える「生粋の英国人男性薬剤師」。南ロンドンで生まれ育ち、地元の小ー高校へ通い、プレレジをこの南ロンドンの大学病院で行い、その後一度も転職せずここで働き続けている。でも、大学の時だけロンドン外で暮らし、その4年間を過ごしたバースの街には、今でもとても愛着を持っている様子。

いつもは無口な彼だけど「自身のバース大学時代の思い出」については、嬉々と話してくれた(笑)

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最近、中堅薬剤師に内部昇格したカーティス君、おめでとう! この写真は、ちょっと前、彼の外科ローテーションの監督薬剤師として評価ミーティングしていた時のもの

カーティス君の「仮免許(プレレジ)薬剤師時代」については、こちらのエントリ(リンク下⬇︎)でも紹介しています。

 

では、また。