日英薬剤師日記

イギリスの国営医療(NHS)病院で働く、臨床薬剤師のあれこれ

「The Pharmacy Show (薬局ショー) 」へ行ってきた in 英国バーミンガム(中)

 

このエントリは、前回(リンク下⬇︎)からの続きとなっています。


英国の街の薬局・薬剤師を対象にした展示ショーであったため、そこで通常扱われている商品のディスプレイも多彩だった。

英国で売り上げ No. 1  OTC 薬「ニューロフェン (Neurofen, イブプロフェンの商標名)」のスタンド(写真下⬇︎)とか

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ちなみに「イブプロフェン」は、英国では「アイブプロフェン」と発音しています。日・英・米での医薬品の発音・表記の違いの数例を紹介した過去のエントリは、こちら(⬇︎)からどうぞ

英国に住んでいれば、誰しもが一度は「あ、見たことある!」というブランド OTC 薬の数々。

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英国の薬局でほぼ必ず扱っている製品が、ここに大集結。「Tixylix (子供用咳止め)」「Covonia (大人用咳止め)」「Care  (坐剤・クリーム剤といった外用薬での有名ブランド)」

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「Metanium (赤ちゃんのおむつかぶれ皮膚保護軟膏)」や「Oilatum (乾燥肌用クリームや入浴剤)」

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「Olbas Oil (メンソールとユーカリ油がベースのエッセンシャルオイル)」の会社のパネル。ちなみに、その右隣の「Kalms」は、薬局で購入できる抗不安・睡眠薬として、これまた英国内ではよく知られた製品

オルバスオイルについては、過去のこちらのエントリ(⬇︎)でも紹介しています。


ご時世を反映して、特に消拭剤製品は大きなスペースを取って展示されていた。

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「WetOnes (消拭製剤) 」も「AnuSol (痔治療薬製剤) 」も、英国を代表する薬局製品

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英国内の医療用消拭剤製品シェア No. 1 の「Clinell」

普通の薬局ではあまり見かけないドライアイ用の目薬(写真下⬇︎)も、実際に自分の眼に試してみたりした。

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OTC 薬として発売されているヒアルロン酸 0.4% の人工涙液目薬

そんな中、一つ大発見。

この会場内では、さまざまな薬局雑誌も無料配布されていたのだけど、ふとその一つを手に取り、ページをパラパラとめくっていたらね。。。

日本のロート製薬が「ドライエイドコンタクトa」を、英国内で発売したという広告(写真下⬇︎)が掲載されていたの!

これ、私、2年前に日本で休暇を過ごした際に、たまたま見つけて買ってみた。あまりに気に入り、その滞在の最後の出国直前に、羽田空港内の薬局に飛び入り、店頭にあった在庫を全部買い占めて帰国したほど。

それがちょうど最後の一本となっており、「これからどうしようかな。。。?」と思っていた矢先であったため、運命的な「再会」となりました(笑)。

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この薬局ショーへ行かなければ、知る由もなかった「Rohto Dry Aid」。帰宅後、さっそく購入しました

私、コンタクトレンズ歴30年以上。だから、ドライアイ用の目薬を色々と試すのが大好き。そんな事情は、過去のこちらのエントリにも書いています。

 

「サプリメント系製品」の展示ブースも多かった。私、病院薬剤師だから、こういった製品を日常の仕事ではあまり目にしないので、今回、良い勉強になった。

例えばこちらの「ソルガー (SOLGAR)」社(写真下⬇︎)。英国には、日本の「ビオフェルミン」に代表されるような整腸剤が、国家フォーミュラリー (British National Formulary, 通称 BNF) に収載されていない。でも、私、かれこれ8−9年前、ロンドンの日系医療クリニックで働いていた時、そこの薬局では、この会社から発売されている「Advanced Acidophilus」が、ビオフェルミンに相当する英国の製品として常時在庫され、来院する患者さんへ頻出されていた。私自身、それまで英国の薬局業界で 10 年ほど働いていたものの、ついぞ知らないメーカーだったので、そこで長年働く薬局長さんの「日・英の薬剤の対比」の知識の深さに驚いたものだった。

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私が、ロンドンの日系医療クリニックで働いていた時のことは、以前のこちらのエントリ(⬇︎)でも紹介しています。

英国で認可されている薬が羅列されている国家フォーミュラリー 「British National Formulary (通称 BNF) 」については、以前のこちらのエントリもどうぞ

それから、私も日常でよく使用している、喉スプレーの会社「A. Vogel」。

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扱っている商品が全て自然由来のものであることから「苗床」をイメージした棚に全商品を展示。そして、主力製品であるエキネシアの花を屋根一面に飾っていた。大きな会場内でもひときわ目を引く華やかなブースでした。

こちらの会社の「エキネシア喉スプレー」に関しては、過去のこちらのエントリ(⬇︎)でも言及しています。

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私自身「欲しい!」と思う商品が、たくさんあった

実はこちらの会社のとある製品の一つを、私自身、大分前から試してみたいと思っていたものの、オンライン購入サイトでは、長い間欠品となっていた。その実物がまさに展示されていたため、スタッフの方を捕まえて「あのー、これ、ここで売ってもらえませんか🙇‍♀️?!」と交渉してみたが、丁重に断られた(苦笑)。「全国津々浦々で、ずーっと欠品になっているんですけど。。。」と言ったら、帰宅後、会社のウェブサイトを覗いてみると、即、在庫されていた。

やったー! 私の一消費者としての声が届いたんだな(笑)

 

それから、ロンドンの地下鉄の駅や、市内のバス停のビルボードで必ずと言っていいほど見かける広告として知られるこちらの植物由来の鉄分補足剤(写真下⬇︎)とか、

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こちら、日本でも販売されていると聞き知っています

宗教や信条上の理由からカプセルやアルコールを含む薬を服用できない(したくない)方でも安心して利用できるビタミン剤製品会社(写真下⬇︎)のブースもあった。イスラム教徒の薬剤師が立ち上げたベンチャー企業のようです。

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私、英国で薬剤師になって、一番最初に実務薬剤師として雇用されたのが、北西ロンドンのイスラム教徒とヒンズー教徒が共存して暮らすエリアに所在する病院だった。

イスラム教徒は、特に肉類はハラールと呼ばれる特別に屠殺されたものしか食べず、ヒンズー教徒の多くは菜食主義だ。両者とも飲酒は禁じられている。だからその病院では、動物性のゼラチンでできている「カプセル」の服用を嫌がる患者さんが多かった。患者さんの希望に応じ、カプセルで処方された薬は、薬剤師の一存で、錠剤やノンアルコールの液剤に切り替えて調剤をしていたことを思い出した。

ちなみに英国で「散剤」は稀。嚥下困難な患者さんへは「液剤」にして調剤するのが普通。よって、ほぼ全ての薬剤を特注で液剤にしてくれる製造会社(写真下⬇︎)も存在する。

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英国の薬剤師の間では知らぬ者はいない、と断言できるほど有名な特注液剤製造会社「Rosemont」のブース。巨大サイズのオメプラゾール液剤モデルの上に、実際の液剤を展示していただけでしたが、非常にインパクトがありました

 

会場では、薬局人材のリクルートも盛んに行われていた。

英国チェーン薬局2番手の「ロイズ (Lloyds) 薬局」(写真下⬇︎)とか

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会社の良さや雇用条件を、熱心に説明してくれました。ごめんね、今のところ、私、転職は考えていないのだけど。。。

ロイズは近年、街の薬局店舗のみならず、国営医療 (NHS) 病院の外来業務や、高額医薬品の定期宅配サービスなどへも事業を拡大している上り坂のチェーン薬局です。以前のこちらのエントリ(⬇︎)の紹介もどうぞ

前回のエントリで、2代目御曹司社長がシンポジウムに登壇していたことを紹介した「デイ・ルイス (Day Lewis) 薬局」(写真下⬇︎)とか

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インド系移民のカリスマ先代社長が一代で300店舗にまで拡大させたチェーン薬局「デイ・ルイス (Day Lewis Pharmacy) 」。私が日本の薬剤師免許を変換した英国南部ブライトン大学の海外薬剤師免許変換コースのクラスメイトの多くがこちらのチェーン薬局でアシスタントとして働き、学業と生計を両立させていました

会場の片隅では「インフルエンザワクチン接種手技講習会」(写真下⬇︎)も開かれていた。

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英国では近年、インフルエンザワクチンの接種は街の薬局で行うもの、という考えが普及しています。よって、注射の手技は、薬剤師にとって必須習得のスキルとなっています

 

本当に盛りだくさんな「薬局ショー」でした。まだまだ語りきれていないので(笑)、このレポートは次回へさらに続きます。

 

では、また。