このエントリはシリーズ化で、こちら(リンク下⬇︎)からの続きとなっています。
という訳で、ロンドン大学キングスカレッジを第一志望とし、意気揚々と入学願書を書き始めたのであるが;
結論から言えば、当初計画していた直近の 2021年9月入学は見送る形となった。無理難題が次々と降り掛かり、願書の提出締切日までに(到底)間に合わなかったのだ。
まず第一関門は、これだった。あまりに間抜けすぎて、口にするのが憚られるのだが。。。。
大学ウェブサイト上の入学案内が甚だ分かりにくく、出願に必要とされる書式の一つが(どうしても)探し出せなかったのだ。それで数週間という時間を無駄にした挙句、このコースを卒業したばかりであった上司のドナさんに(恐る恐る)聞いてみると、彼女も「ああ、それ、私が出願した時も、なかなか探し出せなかったんだよね。。。」と呟きながら、私の目の前で、即座に見つけてくれた。まさに、先達はあらまほしきことなり。
このブログでたびたび登場する、私の現在の上司「ドナさん」については、過去のこちらのエントリ(⬇︎)もどうぞ
長年運営されているコースなので、入学希望者の大多数は(私が、ドナさんに助けを求めたように)職場の先輩からの口コミで最新の『生』情報を得ているのであろう。よって大学側としては、公式ウェブサイト上の内容があやふやでも、一向に改善する気はないようであった(例:スクリーンショット⬇︎)。
ところでこの処方薬剤師免許取得コースは、英国保健省下の国営医療サービス (NHS) 教育機関や英国王立薬学協会が定めた指針を基に、各大学がそれに沿った教育・訓練課程を提供しているという形態。そのため、出願の際は「大学自体への願書(各大学の専用サイト上から入力)」と「処方薬剤師免許取得に特化した願書(規定のワードフォーマット文書で、志望大学の願書の一部として添付し提出)」の2つを作成しなければならなかった。当初はその意図が分からず「何で(ほぼ)同じ内容の願書を、別個に作成するのかな。。。?」と不思議でならなかった。
そして私は、この点での無知から、後日、大失態を招くのである。
それから、この願書提出に当たり、私自身のバックグラウンドに起因する諸々(もろもろ)の問題を解決しなければならないことが、次々と判明した。
英国の大学(院)では、入学出願のたびに「自身の国籍 - もし英国籍を持たない場合、現在、どのようなビザで英国に在住しているのか」の開示を求められる。英国の大学は、外国人留学生 (Overseas Student) に対しては、英国籍もしくは永住権取得者(= 俗に『本国学生 (Home Student)』と呼ばれる)の、3倍高額な授業料を請求しているからね。留学生は、ずばり、恰好の金蔓だ。
ロンドンは、私も含め、世界中からやってきた移民たちで成り立っている街。でも一般的には、最初、何らかの形(例:留学生)でやってきた者でも、一旦永住権を取得すると、その殆どの者は数年後、その永住権をアップグレードする形で、英国籍(=英国パスポート)も取得する。
でも、日本は世界でも珍しく、二重(もしくは多重)国籍を認めていない。そのため私は、英国籍を取得せず、あえて永住権取得者のままであり続けている。こういったカテゴリーの者は、英国で長年暮らす者の中では珍しいのである。そして、永住権取得者ゆえ、大学の授業料は本国学生料金となるはずが、事あるごとに「本当なんですか?」と説明を求められる。ひとえに英国籍(=英国パスポート)を持っていないが故の尋問で、正直、これ、ホントに面倒臭い。
私は、2008年に英国永住権を取得しました。その時の模様は、過去のこちらのエントリ(⬇︎)もどうぞ
さらには、今回の入学願書では、母国語と教育言語についての質問があった。オンライン上から「日本語」、そして「自国・祖国での薬学教育を英語で受けてこなかった」という項目をクリックしたら、自動的に「英語力を証明する試験 (例:IELTS) 」の証書を添付して下さい」という画面となった。そしてそれを添付しない限り、願書の記入もその先へ進めない状態となってしまった。
日本は、薬科大学での教育を英語で行っていない、世界でも少数派の国の一つです。その背景や状況は、過去のこちらのエントリ(⬇︎)でも述べました。
この場に及んで IELTS を再び受験するのは、あまりに大きな負担だよおおおーー😂😂😂(→ 試験テクニックが必要な試験なので、今、突然、準備なしに受験しても、合格しないのではと危惧した。それに受験料、現在、日本円換算で3万円 / 回ほどらしいですね。高っつ 💸!)と、その回避策を必死に捻り出さなければならなくなった。
英国の大学に入学する時に必要とされる英語能力試験の代表格である「IELTS」についてと、私が10年以上前、それを受験した時のことは、過去のこれらのエントリ(⬇︎)もどうぞ。
それで色々調べると、英国薬剤師の免許登録機関である The General Pharmaceutical Council が「英国の薬科大学を卒業し、薬剤師免許を取得した時点で、英語をネイティブ並みに話せる者である」と認定していることが分かった。私は日本で薬剤師免許を取得したが、英国内の薬科大学院で、免許変換コースを履修した。だから、英国の薬学部卒と同等の学位を持っていると言える。しかも、私はこれまで英国で、3つの大学院を卒業している。よって「英語の試験証明は(今さら)必要ないはずです」といった旨を陳述した文書を独自に作成し、大学院の卒業証書(写真下⬇︎)も逐一スキャン送付し、IELTS の再受験を(ようやく)免除してもらうことができた。
それにしても、こういった一連の事務処理、そしてそれに伴う気苦労は、生まれながらの英国人、もしくは英国籍を持っている者であれば、不要なのである。英国で暮らす中で、日本人であることが、明らかに不利となる事例の典型。日本も二重国籍を認めてくれたらいいのになあ。。。。 でも私は、この地球上で、日本より良い国はないと思っているし、日本のパスポートは世界最強だと理解しているので、それを手放すことは(現時点では1ミリも)考えていない。
そして、最大の難関となったのは、「奨学金獲得」に関してであった。
以前、説明したように(リンク⬇︎)、英国では、薬剤師の系統だった卒後教育にはほぼ全て、国の医療教育機関から奨学金が出ている。
それで、ある日、入学願書の1ページであった「誰がこのコースの授業料を払うのか → 英国国営医療教育機関への奨学金給付申し込み」欄の承諾サインを求めに、勤務先病院薬局の教育・訓練主任薬剤師の元を訪れると、なんと;
「今年の予算は、すでに枯渇した」
と告げられたのだった。
国の医療予算は、新型コロナウイルス (COVID-19) 対策にことごとく廻されており、教育・訓練目的の使い道は、まだ年度始めというのに、既に使い切ってしまったとのこと。
青天の霹靂だった。
「でも(国の医療教育機関からではなく)病院内全体の教育・訓練部署から、あなたへ奨学金が出せるかも知れないから、当たってみて」と、言われた。
この国では、こういったルールが、猫の目のように変わる。奨学金獲得マニュアルなんて、どこにもない。
やりたいことがあれば、自らアクションを起こし「ゴリ押し」しなければ、何も動かないのだ。
で、病院内の教育・訓練部のドア(写真下⬇︎)を叩くと、
所定の「奨学金申請書」を提出して下さい、とのこと。
それがまた、複雑極まりない書式のものだった。
まあ、授業料 3500 ポンド (= 日本円 57 万円相当) を、全額返済不要で給付してもらうのだから、審査も慎重にならざるを得ないというのは、十分理解できたのではあるが。。。。
その時点で、入学願書の提出締切日が、すでに1週間後に迫っていた。よって私はこの申請書を、徹夜で書き上げたのであった。
しかし、結局、病院内での審査とやらで;
「上司との定期査定で、この処方免許を取得するという了承が得られているという記録がない。それが証明できるまでは、病院内からあなたへ、奨学金は給付できない」と。
(→注:何年も前から話し合われ、口頭では合意されていたのだが。ちなみに、過去にこの処方免許コースを履修した先輩薬剤師たちの大部分は、国からの奨学金で行ったため、この点について指摘されたことは、未だかつてなかった)
私の申請は、一旦保留ということになり、その時点で、2021年9月入学の可能性は、閉ざされた。
この何もかもうまく行かない状況に、落胆を隠せなかったが、ロンドン大学キングスカレッジの処方薬剤師免許取得コースは、年に3回(=9月・1月・5月)入学を受けつけている(→注:他の大学は、年に1−2回の入学のみ)。つまり4ヶ月後に、入学申込締切日がまた設定されているのが、不幸中の幸いだった。
上司のドナさんも「私が出願した時も、奨学金給付に関して一悶着あってね。願書を締切日ギリギリに提出したら、すでに応募者多数で、すでに受け入れ最大定員に達してしまっていたみたい。だから合格通知は受け取ったのだけど、次の次の回に入学させられることになってしまったのよね」と話してくれた。
それを聞き、私自身、今回無理して出願しても、入学できなかったかもな。。。。とも考え、
これから1−2ヶ月で、願書に関する全てのことを完璧に解決しよう。そして、締切日より大分前に余裕をもって提出し、2022年1月の入学を『絶対に』確保しよう! と気を取り直した。
しかし、それからの4ヶ月は、瞬く間に過ぎていったのだった。
その後の、奨学金獲得と願書提出のドタバタについては、次回へ続きます。
では、また。