日英薬剤師日記

イギリスの国営医療(NHS)病院で働く、臨床薬剤師のあれこれ

スティーブン先生のこと(2)「素晴らしく有能な薬剤師だね」

このエントリは、前回(⬇︎)からの続きです。 なぜか不思議と縁のあった、とある同僚医師との出会いと別れを描いた実話です。 昨年11月中旬の週末明けの月曜日。 朝、いつものように、担当の急性期内科病棟(→私の勤務先の病院群内で最も忙しく危険度の高…

スティーブン先生のこと(1)出会いと別れはいつだって突然に

これまでの人生で、出会いと別れを、これほどまでに幾度も繰り返した人(写真下⬇︎)はいない。 その人の名は「スティーブン先生」という。 スティーブン先生が日頃、医師として働く姿を如実に捉えた写真。ひょうきんで温かい人柄ながらも、仕事に向き合う時…

2023年の振り返りと2024年の目標

早いもので、今日はすでに、2024年1月の末日ですね。 このブログを開設して以来、毎年1月6−7日に「明けましておめでとうございます」の新年初のエントリを書いてきました。しかしながら、今年は喪中ということで行いませんでした。 でも、遅ればせながら…

父の病と死と医療

私事であるが、先月末、父が亡くなった。 過去約15年、認知症、水頭症、パーキンソン病を患っての86歳の生涯だった。 今回のエントリでは、その病の経過を伝えたい。 家族の一員として、そして、医療を職業とする者としての視点から、あの時、ああしとけ…

第56回日薬学術大会の登壇者としての舞台裏話(下)

このエントリは、前回(リンク下⬇︎)からの続きとなっています。 会場であった和歌山城ホールに到着すると、ものすごい数の参加者の熱気で溢れていました。 「薬学部ができたばかりの小さな県でも学術大会ができることを実証したい。従来の大都市のみならず…

第56回日薬学術大会の登壇者としての舞台裏話(上)

先日、日本へ帰国していた。 9 月 17 −18 日に和歌山で開催された、第 56 回日本薬剤師会学術大会(⬇︎)に登壇したため。 第56回日本薬剤師会学術大会・参加登録章 実は私、日本で6年半薬剤師として働いていた時代、こういった類の学会へ行ったのは、…

プリンシパル薬剤師 (Principal Pharmacist) になった

すっかり言い(書き)そびれていたのですが。。。 数ヶ月前、転職試験に受かり「プリンシパル薬剤師 (Principal Pharmacist) 」に昇格した。 英国の国営医療サービス (NHS) が定める職務階級制の中で、臨床現場薬剤師としては最高位のポジション。 英国の国…

ブルガリアヨーグルトの失恋と、ちらし寿司 v.s. TERIYAKI 女子会

今日は、7月末日ですね。 英国では、研修医たちの1年間の訓練の最終週でもあります。 私は、これまで英国でおよそ 10 年間病院薬剤師として働いてきて、数えきれないほどの数の研修医の先生たちと接してきました。 今回のエントリでは、その中でもことさら…

最近の英国国営医療サービス (NHS) ストライキ中に起こったこと、考えたこと(下)

このエントリは、前回(リンク下⬇︎)からの続きとなっています。 数ヶ月前から英国国営医療サービス (NHS) で起こっている、研修医や看護師のストライキの中、私が実際に目の当たりにしたことの記録です。 4)当直勤務中に起こった大惨事 今年の4月、平日…

最近の英国国営医療サービス (NHS) ストライキ中に起こったこと、考えたこと(上)

日本でも報道されているはずなので、ご存知かも知れませんが; 最近、英国では、どこもかしこもストライキの嵐が吹き荒れている。 代表的なところでは、鉄道、地下鉄、バス、郵便局、小学校教師、などなど。 私が勤務する英国国営医療サービス (= National …

見知らぬ街の薬局を訪れてみた。宮城県・仙台市編

先月、日本へ里帰りをしていた。 3年半ぶりに。 昨年度 (2022/23年) の有給休暇は、処方薬剤師免許取得のための自主勉強時間に、ほぼ全てを使い果たしてしまっていた。よって当初は、最後に残った5日で休息できそうな、英国内での気軽な旅行を考えていた。…

処方薬剤師免許取得への道(12)OSCE 実技試験

このエントリはシリーズ化で、前回の話はこちら(⬇︎)になっています。 2022年1月から9月まで、ロンドン大学キングスカレッジにて大学院のコースを履修し、処方薬剤師免許を取得した課程を振り返るシリーズとなっています。 処方薬剤師免許取得の一環とし…

処方薬剤師免許取得への道(11)フィジカルアセスメント実習

このエントリはシリーズ化で、前回の話はこちら(⬇︎)になっています。 2022年1月から9月まで、ロンドン大学キングスカレッジにて大学院のコースを履修し、処方薬剤師免許を取得した課程を振り返るシリーズとなっています。 大学院での理論的な講義と並行…

見知らぬ街のスーパーマーケットの薬棚と病院を訪れてみた。英国・湖水地方編

このエントリは、こちら(リンク⬇︎)からの続きとなっています。昨年10月(かれこれ4ヶ月も前!)に、英国北西部カンブリア州で休暇を過ごした時の記録となっています。 湖水地方への入り口であるケンダルという街で、夜中に唯一開いていたマクドナルドで夕…

2023年明けましておめでとうございます

遅ればせながら、明けましておめでとうございます。 いつも「日英薬剤師日記」にアクセス下さり、ありがとうございます。 日本では(地域によって異なるとのことですが)1月7日に松の飾りを片づけ、正月の終わりとし、英国では1月6日にクリスマスツリー…

見知らぬ街の薬局と家庭医院を訪れてみた。英国・湖水地方編

かなり時間が経ってしまったが、先々月、1週間ほど休暇を取った。 今年1月から大学院で履修していた「処方薬剤師免許取得コース」が終了したので。 私が目下、薬の処方ができる薬剤師を目指している過程は、こちら(⬇︎)でシリーズ化しています(→注:かな…

処方薬剤師免許取得への道(10)大学院の授業内容(下)

このエントリはシリーズ化で、前回の話はこちら(⬇︎)になっています。 今年1月から、ロンドン大学キングスカレッジで履修していた「処方薬剤師免許取得コース」の講義内容の紹介と、そこから派生したトピックについて書き綴ります。 講義5:アドヒアラン…

英国ロイヤルバレエ団公演「マイヤリング」を観て。性病とモルヒネと心臓発作

今年1月から大学院で履修していた「処方薬剤師免許取得コース」が一段落ついたので、先日、これ(⬇︎)を観てきた。 英国ロイヤルバレエ団の今秋の演目「マイヤリング (Myerling) 」。 現所属ダンサーたちの中でも抜群のパートナーシップと言われる「スティ…

処方薬剤師免許取得への道(9)大学院の授業内容(上)

このエントリはシリーズ化で、前回の話はこちら(⬇︎)になっています。 2022年1月初旬から、大学院での授業が始まった。毎週火曜日に丸一日を費やして行われ、3月末まで続いた。 通常であれば、大学キャンパス内での教室にて行われるものであったが、新型…

処方薬剤師免許取得への道(8)ラーニング・コントラクト (学習規約書) の作成

このエントリはシリーズ化で、前回の話はこちら(⬇︎)になっています。 「ラーニング・コントラクト (Learning Contract) 」という言葉とコンセプトをご存知でしょうか? これ、英国の薬剤師の間では『常識』的に使われている。 英国の薬剤師は、ずばり、徒…

処方薬剤師免許取得への道(7)大学院コース開始

このエントリはシリーズ化で、前回の話はこちら(⬇︎)になっています。 昨年末、ほぼ一年がかりで準備をしてきた「処方薬剤師免許取得コース」の合格通知が届いた。そしてなんと、そのわずか2−3週間後には、大学院生となることになった。 英国では、クリス…

あの日、あの時、あの場所で。英国薬剤師国家試験を受けた日から10年

前回のエントリから、大分間が空いてしまいました。 私、目下、入学した大学院(=処方薬剤師免許取得コース)の、次から次へと押し寄せる課題提出物の締切りに、あっぷあっぷと溺れかけている(苦笑)。 でも、その話はひとまず置いて、今回は、このことに…

処方薬剤師免許取得への道(6)奨学金獲得と合格通知

このエントリはシリーズ化で、こちら(リンク下⬇︎)からの続きとなっています。 さまざまなことに東奔西走しながら、それを一つ一つ解決していき、もうすぐ願書は完成する、という矢先のことだった。 勤務先病院内の教育訓練部門から、今回、奨学金は1000ポ…

処方薬剤師免許取得への道(5)自分の専門と監督医師を決定

このエントリはシリーズ化で、こちら(リンク下⬇︎)からの続きとなっています。 2021年9月入学の扉が閉ざされたため、失意の中にいたが、4ヶ月後には、2022年1月入学の締切日がやって来る。 それに向けて、私は再び、走り出した。 まずは、上司のドナさん…

処方薬剤師免許取得への道(4)多難続きであった大学院出願手続き

このエントリはシリーズ化で、こちら(リンク下⬇︎)からの続きとなっています。 という訳で、ロンドン大学キングスカレッジを第一志望とし、意気揚々と入学願書を書き始めたのであるが; 結論から言えば、当初計画していた直近の 2021年9月入学は見送る形と…

処方薬剤師免許取得への道(3)大学院選び

このエントリはシリーズ化で、こちら(リンク下⬇︎)からの続きとなっています。 英国で、医師・歯科医師以外の医療従事者でも、薬の処方をすることができる免許を取得するのに必要なコース課程を提供している大学院は、現在、国内に数多くあります。 今回は…

見知らぬ街の病院を訪れてみた。英国コーンウォール編

今月、一週間ほど休暇を取っていました。 私、目下「処方薬剤師免許」の取得を目指し、パートタイムで大学院生をしている。学校からは「集中的なコースだから、履修中は、できるだけ休みは取らないように」と言われているのだけど、これから9ヶ月、ずっと働…

処方薬剤師免許取得への道(2)順番待ち

このエントリはシリーズ化で、前回(リンク⬇︎)からの続きとなっています。 英国の国営医療サービス (NHS) 病院勤務の薬剤師たちは、前回のエントリで説明をした「卒後教育課程の臨床薬学ディプロマ」にしても「処方薬剤師免許」の取得にしても、自己負担金…

処方薬剤師免許取得への道(1)その歴史

英国では、医師や歯科医師以外の医療従事者でも、薬の処方ができます。 看護師、助産婦、理学療法士、放射線技師、検眼士、足治療師、救急隊員、そして薬剤師がそのカテゴリーに該当します。 現時点では、各医療職本来の免許を取得し、最低2年の実務経験を…

ロイヤルバレエ団ダンサーと英国国営医療 (NHS) 薬剤師の類似点

今回のエントリは、前回(リンク⬇︎)からの続きとなっています。 先日「くるみ割り人形」の公演を観て考えた、ロイヤルバレエ団のダンサーたちと、英国薬剤師との類似点について、さらに具体的に紹介していきたいと思います。 1)トップに上り詰めるのは、…