日英薬剤師日記

イギリスの国営医療(NHS)病院で働く、臨床薬剤師のあれこれ

2023年の振り返りと2024年の目標

 

早いもので、今日はすでに、2024年1月の末日ですね。

このブログを開設して以来、毎年1月6−7日に「明けましておめでとうございます」の新年初のエントリを書いてきました。しかしながら、今年は喪中ということで行いませんでした。

でも、遅ればせながら、昨年の振り返りと、今年の目標設定は、公開してみようかと。

 

昨年2023年は、私にとって、大きなことが立て続けに起きた年でした。

一昨年の2022年に、処方薬剤師免許を取得すべくパートタイムで大学院へ戻ったことで、体力的にフラフラになりました。そのため、2023年の目標として、とにかく「休む」という、いわば休業宣言をしたのですが、そのわずか数ヶ月後に、プリンシパル薬剤師の求人が出て、合格。

私がプリンシパル薬剤師に至ったまでの長い道のりにご興味のある方は、過去のこちらのエントリ(⬇︎)をどうぞ

また、それとほぼ同時期に、日本薬剤師会から依頼があり、9月の和歌山の学術大会に登壇させてもらうという機会にも恵まれました。その帰国中に、何年もご無沙汰していた多くの日本人の旧友・知り合いにお会いでき、貴重な時間も過ごせました。

でもその後、プリンシパル薬剤師への昇格に当たり、私の従来の英国滞在ビザ(=永住権)のアップデートが必要なことが分かりました。それで、過去 15 年分の銀行口座明細や税金の支払い証明書、これまで住んできたロンドン市内の数々の住居の住所証明や雇用記録などを英国法務局に提出する必要に迫られ、色々と大変な思いをし。。。

そして、その新しいビザ(通称「英国バイオメトリック・レジデンス・パーミット」)が取得できた途端に、父の死という悲しい知らせを受けました。

このブログに関しては、2023年は「処方薬剤師免許取得への道」シリーズを完結したかったのですが、書けば書くほど、コース履修中のトラウマが次々と思い出され、心身に悪影響だと、途中で中断せざるを得ませんでした。

現在、一時中断している「処方薬剤師免許取得への道」シリーズの現時点での最新エントリは、こちら(⬇︎)です。

そんないい加減なブログ運営にも関わらず、このサイトには、毎日、毎日、世界中から必ず誰かが訪れて下さっています。

読者の皆さまには、本当に感謝です。

 

では、2024年の私の目標の公開です。

 

1)新しい薬剤師像の模索 (New Vison)

プリンシパル薬剤師になった途端に、急に崖っぷちに立たされ、行き止まりになった感がありました。それは、

「あれ? ロールモデルがいなくなっちゃった」

ということ。

英国の病院薬剤師のキャリアパスって、実に明快です。

薬科大学卒業後 → 仮免許薬剤師(以前は「プレレジ」と呼ばれていましたが、最近、「トレイニー (Trainee)」と名称が変わった)→ 新卒薬剤師 → 中堅・専門薬剤師 → そして最高位のプリンシパル薬剤師。

この「英国病院薬剤師のキャリアパス=階級制」の概要についてご興味のある方は、過去のこちらのエントリ(⬇︎)もどうぞ

プリンシパルになると、若手薬剤師たちの包括的な教育・訓練に大きな時間が占められるようになります。それを徹底させるため、業務マニュアルやら臨床ガイドラインの作成にも労力が取られるため、自ずとデスクワークの比率が高くなります。理想的には第一線の臨床薬剤師として医療現場で働きつつ、管理業務と両立させるべきですが、次第に臨床の第一線から遠のく人が大多数です。特に最近、プリンシパル薬剤師になった途端に、臨床知識・技術が一気に落ちていく薬剤師を、身近で何人も見てきました。

そんな「周りのプリンシパル薬剤師たち」が、今後、私が目指したい姿なのかな? と。

このような危機感を持ったもう一つの理由として、私がこれまで尊敬し、教えを乞うてきた、国内でも著名なプリンシパル薬剤師たちが、ここ数年で、年齢的に次々と引退していっている状況もあります。これまではその方々を真似していれば、何とかなっていたところも、時代の変化で通用しなくなってきている。英国の薬剤師たちは、このところ、世代交代の時期にきていることを、私自身、ひしひしと肌で感じ取っていました。

でも、そんな悶々とした思いを抱えて過ごしていた昨年 11 月、とある旧知の方との奇跡的かつ衝撃的な再会がありました。

そこで(大げさな表現ですが)開眼した私は、

「現存のプリンシパル薬剤師像に不満なら、自分が全く新しい形のプリンシパル薬剤師になればいいんだ!」と。

そんな、自分が信じる「新しい薬剤師像」を、全力疾走で実践する一年にしたいです。

(この思わぬ幸運とインスピレーションを与えてくれた人との邂逅については、次回以降、このブログに書くつもり)。

 

昨年秋、これまでにない葛藤を抱えていた頃、「道なき道を歩む人って、どのような生き方や考え方をしているのだろう?」と、ロンドンで開催された X JAPAN の YOSHIKI さんのクラシカルコンサート (10月13日) にも足を運びました。サービス精神旺盛な YOSHIKI さんと観客が一体になったショー(写真上⬆︎)に心の底から感動し、勇気をもらいました。 ちなみに私、X JAPAN、つい最近まで知らなかったんですよ(これを言うと、皆さん本当にびっくりされるのですが。。。)。会場となった 7000人を収容できるロイヤルアルバートホールも、日本人の観客と思しき方々はごく一部で、世界的に活躍する YOSHIKI さんの凄さを目の当たりにした次第。私も国境を越えて通用する一流の臨床薬剤師になりたいと誓った夜でした。

 

2)医学への傾倒 (Medicine)

処方薬剤師免許を取得してから、痛切に感じていることがあります。それは;

「きちんと診察できなければ、薬は処方できない」

ということ。

まずは薬ありきで患者さんを見ていた従来の薬剤師であった頃は、それが分かっていませんでした。

でも、免許免許取得コースの課程で、フィジカルアセスメントの技術を習得したり、より高度な医学知識を得、日々のチーム医療の中での病棟回診の際も、例えば、いくつかの仮診断名や誤診の可能性も含めた上での、多角的な薬剤治療方法が提案ができるようになってきています。

最近では、一緒に働く医師の先生方からも「マイコぐらいのレベルの薬剤師だったら、MRCP (= Membership of the Royal Colleges of Physicians of the United Kingdom →英国の中堅研修医が受ける試験) 受かるんじゃないかな」と言われおだてられ、

そうだ、それいい考えだ! 今後の新しい薬剤師像を目指す一環として、まずはこれらの受験準備の参考書(写真下⬇︎)を手始めに、さらに広い医学分野の知識を得るべく勉強してみようかな、と。

勤務先の病院の図書館は 24 時間アクセスでき、このような医療従事者たちのキャリアステップアップ試験前になると、夜中の2−3時でも、多くの者たちが勉強しています。こういう熱意ある人たちが周りにいる環境は本当に有難いです。

勤務先の病院の図書館には、英国の医師試験の参考書のみならず、米国の医師登録試験の問題集もある。これを利用しない手はない(笑)

一般的な医学知識の向上以外にも、自身の仕事が、これまでの感染症から一般内科へ変わったため、新しい上司から「内科の中でも、何か一つ専門を極めるべき」という声も頂いています。

私は、広く浅く「何でもやりたい」典型的な日本人ですが、確かに自分の専門については、この一年で見極めていかなきゃな。。。と思っています。現時点での候補としては「腎臓系」もしくは「内分泌系」のどちらかになるのではないかと予測しています。

 

3)健康 (Health)

ここ数年、ずっと掲げている目標ですが、今年も引き続き。

プリンシパル薬剤師(→現在、英国では最低年収 1000万円の職)になった途端に、お金とか物欲といったものに、すっかり興味がなくなりました。英国の薬剤師免許を取得した直後の数年間ほぼ失業状態で、本格的に働き出してから最初の数年は借金を返済していたことを振り返ると、信じられない心境の変化ですが。。。

今、何より欲しいのは健康です。健康でさえあれば、いつまでも大好きな仕事=臨床薬剤師として働き続けられるから。先日亡くなった父の、事実上の健康寿命が 70 歳程度であったことも、健康というものをさらに深く考えるきっかけになりました。

2023年は計4回日⇄英を往復しましたが、こちら、日本へ帰国するたびにコンビニで買い漁った、健康に関する雑誌の数々(笑)

で、最近の私と言えば、ここ数年で老眼が急激に進み、特に小さい字の薬学・医学書がほぼ読めなくなってしまっています。そんな書籍を手元に置いていてもしょうがないと、数週間前、自宅の本棚を大々的に断捨離し、頻用する薬学書は、ほぼ電子版に切り替えました。

「1日800g 野菜を摂ると、人生が変わる」という話を聞き、このところ実践しています(→これ確か、最近ハマっているメンタリスト Daigo さんの 動画 だったはず)。でもねえ、英国の一般的な食生活で、野菜を毎日 800g 入手するって、すんごい難しい所業よ。今、日常で最もお金を使っているのは、野菜の購入かと(笑)

でも、これを実行し始めてから、加工品やレトルト食品が受けつけられなくなりました(→口にすると、明らかに身体の調子が悪くなる)。積年の慢性疲労で、以前は高層階の病棟へ行くのにはエレベーターを使っていたのに、自分の足でピョンピョンと駆け上ることができるようになり、いい感じだなーとほくそ笑んでいます。この調子で、今年は減量ダイエットにも挑戦したい。

そして、身体がより健康的に改善され、いい思い出になった頃合いを見て「処方薬剤師への道」シリーズもまた再開したいです(いつになることやら。。。苦笑)。

 

それでは「日英薬剤師日記」を、今年もよろしくお願い申し上げます。

 

では、また。