日英薬剤師日記

イギリスの国営医療(NHS)病院で働く、臨床薬剤師のあれこれ

日英薬剤師が、日本の薬局で買ったもの(1)

 

電光石火で、日本で休暇を過ごし、英国へ帰ってきた。

 

今回は、家族旅行が主目的であったため、ごく限られた方々にしかお会いしませんでした。ご無礼してしまった皆様、ごめんなさい。

 

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私は、日本へ帰国すると、必ず、街の薬局を訪れ、購入するものがある。英国にはなく、「どうしても、これ欲しい!」と思う医薬品とか日常必需品ね。今回のエントリは、その紹介。

それから、今回の日本滞在中は、思わぬアクシデントにも遭遇。日本の薬局で購入し、本当に助かったものなども挙げ、英国の医薬品と対比してみます。

 

(1)抗菌目薬

英国を経つまでは何ともなかったのに、羽田空港に降り立ったら、左目の片側全体が流血しているのではないかと思われるほど真っ赤になっていた。

唯一思い当たる節は、装着していたコンタクトレンズが長年使用していたものだったので、眼球・血管を傷つけた。。。? 目の中、ちょっと(だけ)違和感あったからね。

一晩明けても、そのひどい充血は悪化するばかり。インターネットで色々調べたら、目があまりに充血している人は、飛行機に搭乗できなくなることもある、といった怖い記事も読んだ。今回の日本滞在は短期の予定だったため、英国に無事帰国できなくなるんじゃないかと、日本へ到着した途端に、パニック状態。。。。

滞在先のホテル近くの眼科クリニックへ飛び入ろうか、とも考えた。でも、私、日本の国民健康保険に入っていない。英国の旅行者保険(→英国大手チェーン薬局ブーツで購入した)は持っていたから、こんな場合は適用されると思ったけど、その払い戻しには通常、「医師の診断書」などが必要。日本の医療機関のなかには、診断書の「英訳」に対応できない、もしくは発行にかなりの時間を要する、そして診断書の発行そのものの費用が高額となるところが多い。日本の医療は、全額自費診療でも、国際的に比較すればそれほど金額的に負担が大きくないため、軽症の場合は自腹で払い、保険会社へ請求しない英国人旅行者も多いと聞く。 

厄介なことになったなあ。。。と思った矢先、「そういえば、日本って、『抗菌目薬』、薬局で買えるはず。それでとりあえず様子を見よう!」と思いついた。遥か昔、日本の薬科大学生の頃、ドラッグストアでアルバイトしていた職経験の記憶よ、ありがとう。で、早速、薬局に立ち寄った。

 

そうしたら。。。。

 

へーっ! 日本の抗菌目薬って、現在は、消費者の手の届く棚にあるんだ(写真下)。昔は、カウンター奥に置いていた記憶があるけれど。。。 日本の医薬品分類、確か、今から10年ほど前に改定されたはずで、私は詳しく知らない。しかも、抗菌目薬、いくつか種類があり、どれを選んだらよいか分からなく、迷う。私、日本の薬剤師免許、保持しているのにねえ(笑)

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で、散々迷った挙句、こちらを購入しました(写真下)。 

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この抗菌目薬、開封したら小袋までついているのにも感動した。こういうところに、日本らしさを感じる


ちなみに現在、英国内の街の薬局で購入できる抗菌目薬は「クロラムフェニコール」一剤のみ。日本の抗菌OTC目薬のように、様々な抗炎症剤は配合されていない。しかも、その販売は 2005年からと、OTC 薬への切り替えも、日本よりずっと遅かった。言い換えれば、抗生物質入りの目薬は、10年ちょっと前まで、全て要処方せん薬だったのだ。英国、スイッチOTC薬への切り替えには積極的だけど、一方で、抗生物質の使用に、とても制限をかける医療政策を採っているからね。

しかも、英国のクロラムフェニコールの点眼液は冷蔵庫保存の製品で、購入したい場合は、カウンターで薬剤師に申し出る。その際、薬剤師が症状などを厳密にチェックしてから販売するため、日本より遥かに購入の難しい薬の一つだと思う。

 

で、結論としては、この心配した「流血状充血の左目」、5日ほどのセルフメディケーションで完治した。日本の医薬品分類と規制事情のお陰でした。

 

 

(2)種類豊富な目薬 

今回、冒頭で、抗菌目薬のことについて書いたけど、私は、日本へ帰国する度に、色々な目薬を買い込む。

 

そもそも薬剤師って、目を酷使する職業だよね。

仕事全般が、間違いを防ぐことを目的とし、常に確認に次ぐ確認の連続だから。。。。

 

英国の国営医療サービス (NHS) では、今、IT 化が急速に推し進められている。

医師を初めとする処方者が処方し、薬剤師によってその処方をチェック、そして看護師によって投薬が行われる業務に加え、薬剤治療経過をモニタリングする検査値のデータ表示なども、全て一つの統一したコンピューターソフトウェアで行うようにする、 ePMA (electronic prescribing and medicines administration の略) というITシステムを、英国全土の国営病院で普及させることが、目下、英国の重要な医療戦略の一つ。

で、私が現在勤務している病院、ロンドンの病院の中でもかなり早い時期に、この ePMAの使用を開始した。大方の大学病院はこの2−3年で本格的に導入したけど、私の病院はすでに5−6年前には使い始めていたので、ほぼ完成された業務システムとなりつつある。 

でもね、そのお陰で、今の私の仕事は、一日中の大部分の時間、コンピューターのスクリーンを追っていると言っても過言ではないことに、最近気づいたの。もちろん患者さんとお話している時はコンピューターから目を離しているのだけど、日中の業務が終わった後も、翌日の回診の準備とか、自分自身の勉強として、患者さんのデータを駆使し症例を熟考する際も、絶えずコンピューターの画面を追っている。その時間を含めると、一日10ー12時間ぐらいは目を酷使しているんじゃないかな。しかも、私はものすごく視力が悪く、コンタクトレンズ使用歴が長い。そのお陰で、目は絶えずボロボロに乾燥している。だから、目薬は職業上欠かせないアイテムの一つ。

 

そんな訳で、今回私が日本で購入した目薬は以下の通り(写真下) 

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そういえば、英国の医薬品の宣伝に、女優やアイドルは起用されない。広告規制が厳しい分野だからね


「ロート・リセ」は、私の長年の定番。何でこれかというと、日本の製薬会社ロートの点眼薬、以前、英国のOTC薬 として、普通に販売されていたから。

大学院時代の学生寮の韓国人の友人が、Rohto Z! というのを使っていたのを見たのが最初。それから周りの人を観察したら、寮の学生たちが揃って、これを使っていた。皆が異口同音に「これでなきゃ、ダメ」と言っていた。OTC 薬が、全般的に低価格である英国にて、約20年前に8−9ポンド(その当時の換算で1500円程度)した。でも、皆、迷わず買っていた。金銭的に余裕のない学生集団だったのにも関わらずだ(ロンドン大学の大学院時代の学生寮で出会った住人さんたちにご興味のある方は、以下(⬇︎)の過去のエントリもご参照下さい)。

 

英国、目薬の種類が本当に少ない。だから、その当時、このRohto Z! の存在は際立っていたの。

でもね、このRohto Z! 、とある時期を境に、英国の薬局からぷっつりと姿を消した。それ以来、私は、日本へ帰国する度に、「ロート・リセ」を買っている。Rohto Zi と類似商品で、ピンク色でかわいらしい。英国人に見せると、必ず「は? ピンクの目薬? 日本人はイノべティブだなあ」と賞賛される。

「ロート・リセ」、最近は、色々なバリエーションも出ているんだね。「ナノ(極小一滴)」だの「角膜トリートメント」など。目薬に限ったことではないけれど、日本の製品の素晴らしい点は、ずばり、飽くなき「改善」と「進化」だと思う。

 

ちなみに、私が英国で(唯一)購入している目薬はこちら(写真下)。

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英国では、コンタクトレンズ着用でも使用可能な目薬の種類も少ない。この Optrex、英国の目薬の主流ブランドなのに、コンタクトレンズ着用でも使用可のものは、事実上これ一つ。しかも、薬局店舗によっては置いていないところがあるから、私は、この製品を見つけると必ず買い占める。

価格は5ポンド(日本円750円)程度のヒアルロン酸製剤。日本の大半の目薬の方が低価格かつ高品質なものが探せる。英国のOTC薬は、殆どのものが日本より低価格。でも、目薬は例外。

だから、日本帰国時の、薬局での目薬探索、やめられない(笑)。

 

 

(3)BAND-AID キズパワーパッド

前述の、日本帰国早々の左目の流血状充血がほぼ治りかけようとしていた時、なんと鼻も怪我した。朝起きて見たら、猫に引っ掻かれたような傷跡が鼻の左側に。。。 原因? 全く覚えがない。しかもこの傷、タチの悪いことに、洗顔などをすると、できたばかりのかさぶたがすぐ破れ、血が出てくるというものだった。数日間、毎朝、微量ながらも流血を繰り返した。

実は、今回の休暇中、一つだけ仕事の約束を入れていた。よりによって私の顔の「撮影」が必要な仕事。その収録を数日前に控え、私は、焦った。

 

でも、日本の薬局にいいものがあった(写真下)

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 これ、英国では(現時点では)販売されていない。この製品のお陰で、とりあえずは、人前に出れるだけの姿になったから、本当に助かりました。

この製品に相当するもの、英国にないと言ったけど、正確に言えば、こちらが同等のものとして挙げられるかも(写真下)。

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こちら、英国の病院の病棟に、必ず常備されている、医療用手当用品。要するに、BAND-AID キズパワーパッドと同じ成分のハイドロコロイドの大きなシートで、患部のサイズに合わせて、ハサミで切って使う。でもね、これを傷口に貼ると、傷口自体は比較的短期間で塞がるのだけど、なぜか周りの健康な皮膚がボロボロになるという代物で、要注意。。。。自身の経験から、よほど深い切り傷ではないと使用しない方が良いという結論に至っている。

当然、BAND-AID キズパワーパッドの方が、優れもの。今回の危機を救ってくれたこの製品、あまりに気に入り、色々な種類のものを買い、英国に帰ってきた(写真下)。私、結構、仕事中怪我するし(→英国の病院は、危険に満ち溢れている。冗談じゃなくて)、防水仕様になっているから、これから絶対役立つと思う。

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「日英薬剤師が、日本の薬局で買ったもの」の話は次回に続く。。。。

 

 

<番外編>

今回の日本滞在中、一つだけ、こちら(写真下)で薬学関係の仕事をしてきました。薬剤師生涯研修プログラムのオンライン講座の収録でした。

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鼻にはまだ少し傷あとが残っていた(笑)私を起用して下さり、本当に感謝しています。

今回、第2回目だったのですが、「英国の医薬品の分類・供給と調剤業務」という講義を収録しました。来年に公開の予定だそうです。

 

では、また。