日英薬剤師日記

イギリスの国営医療(NHS)病院で働く、臨床薬剤師のあれこれ

100日ぶりに外出した。そして、見知らぬ街の薬局を訪ねてみた。英国ロンドン・ヴィクトリア駅編

 

先週末、英国ではついに、外出規制が事実上(ほぼ)解除された。

振り返れば、3月下旬から、通勤や生活上、本当に必要な時しか外出できない状態だった。

私は幸か不幸か、勤務先と自宅が目と鼻の先だし、病院内に食料品スーパーマーケットも、ちょっとした売店もあるから、この3−4ヶ月、全く「外」に出ていなかったのだ。

 

で、そんな私もついに、この解禁初日、ほぼ100日ぶりに外出してみることにしたの。

ロックダウン直前に、最後に外出したのは、ここ(⬇︎)でした。


行き先はね。。。。もちろん、

 

「薬局」(笑)

 

そんな訳で、ロンドンの中心街へ行くために、久しぶりに地下鉄に乗ってみると;

あまりの乗客のなさに拍子抜け。内心、市民が嬉しさで、浮かれ騒いでいる姿を想像していたのだけど。。。。

そして、よーく見渡すと、

f:id:JapaneseUKpharmacist:20200707070242j:plain

私が乗った車両には、広告がたった一つしか貼られていなかった(写真上⬆︎)。英国の代表的なビタミン・サプリメント剤会社「ヴァイタバイオティックス (Vitabiotics) 」の宣伝だった。

日本の電車の百花繚乱のようなつり革広告には敵わないが、英国でも、地下鉄車内は、格好の「商品宣伝」場所だ。

でも、今回のパンデミックで、地下鉄を利用する人は激減。宣伝効果が薄いと、各社は次々に契約を打ち切ったんだろうな。

でもね、それ故に、この「たった一つの『サプリメント剤』の広告」が、私には、鮮烈に記憶に残ったのよ。

この会社の製品については、後で紹介するとして。。。

 

地下鉄を乗り継いで着いたのは、ここ(写真下⬇︎)。ロンドン市内の主要国鉄駅の一つ「ヴィクトリア駅」。

f:id:JapaneseUKpharmacist:20200707071535j:plain

ここ、英国南部へ行く数々の列車の発着駅として知られている。南ロンドンのガトウィック空港へ直通の「ガトウィック・エクスプレス」が有名だけど、ブライトンやイーストボーンといった、ロンドンで暮らす人々が、夏場に「ちょっくら近場の海辺へ」出かける際の出発地点でもある。

ガトウィック空港内の薬局を訪れた時のエントリは、こちら(⬇︎)からどうぞ

英国南部の海辺の街の一つのイーストボーンについては、こちらのエントリ(⬇︎)もどうぞ

ちなみに私は、今からちょうど10年前、英国南部のブライトン大学 (University of Brighton) で「海外薬剤師免許変換コース (Overseas Pharmacists' Assessment Programme, 通称 OSPAP)」を履修した。その1年間、週に2日通学するのに利用した駅でもある。ブライトン大学薬学校、このヴィクトリア駅から特急を使えば、ロンドン市内からでも片道1時間半−2時間で通学できる。

 

で、話を戻すが。。。

それにしても、新型コロナウイルスのパンデミック始まって以来の、英国内での大々的な外出解禁日だというのに、駅の構内は閑散としていた。

f:id:JapaneseUKpharmacist:20200707072204j:plain

あまりのひと気のなさに、びっくり。ここ、通常であれば、英国内で第2位の利用者数を誇る駅です

早速、お目当の薬局へ。

ここ、改札口真向かいにあるために、本来ならば超多忙の、大手チェーン薬局ブーツ (Boots) の支店(写真下⬇︎)ですが、

f:id:JapaneseUKpharmacist:20200711073445j:plain

ブーツ (Boots) 薬局・ロンドン・ヴィクトリア駅店

入り口に来て、まず驚いたのが、入局制限;

「店内に、7名以上のお客さんは、入れません」(写真下⬇︎)とあった。

f:id:JapaneseUKpharmacist:20200707073734j:plain

人数を手書きで書き込む形式であったため、この大手チェーン薬局は、こちらのポスターを全国共通で使用しているのだなと推察

そして「各人が2メートルの間隔を置いて、安全に買い物をしましょう」(写真下⬇︎)と。

f:id:JapaneseUKpharmacist:20200713053926j:plain


で、店内に入り、目を見張ったもの;

商品のほぼ2−3割が「アルコール消毒液」や「マスク」や「使い捨て手袋」。どの商品も、今まで、英国内の薬局では扱っていなかったものばかり。

f:id:JapaneseUKpharmacist:20200710031544j:plain

使い捨てマスクがこんなに売られている。しかも業務用のとかも。手指用アルコール消毒製品もたくさんあるなあ。。。!

f:id:JapaneseUKpharmacist:20200710031903j:plain

現在、英国で公共交通機関を利用する際は、マスクの着用が義務付けられている。駅構内のこの薬局で、慌てて購入する人とかも多そう。それから、棚一面の緑色のボトルは、ブーツ (Boots) 薬局プライベートブランド (BP) のアルコール消毒用ジェル。ブーツ(Boots) は英国内でも、PBに強い薬局として知られている

店内スタッフも、完全防備で対応していた。

f:id:JapaneseUKpharmacist:20200707074512j:plain

薬局スタッフは、全員例外なくフェイスシールドを着用していた

相変わらず、各種鎮痛剤は、品薄だ(写真下⬇︎)。このパンデミックが始まって以来、一時期、英国ではどの街の薬局からも、鎮痛剤が消えた。国民全体が「パニック買い」に走ってしまったから。

f:id:JapaneseUKpharmacist:20200710032506j:plain

店内の床の至る所に、この注意書き(写真下⬇︎)があります。

f:id:JapaneseUKpharmacist:20200710032824j:plain

その数のあまりの多さに、これらはお客さんに対し、注意を守っているか否かの「踏み絵」のようなものか。。。? と

調剤室カウンターを覗いてみると;

今まではなかった透明のプラスチックで囲いがされており(写真下⬇︎)、感染予防の対策が取られていました。

f:id:JapaneseUKpharmacist:20200706031909j:plain

余談になりますが、この写真の右側に写っているのは「体重計」です。英国では、体重計のない家庭が多い。皆、薬局へふらりとやってきて、コインを投入し、体重を測定しています

 普段通り販売されているものもあった。典型的なものは、こちら(写真下⬇︎)。

f:id:JapaneseUKpharmacist:20200710043935j:plain

目薬・コンタクトレンズケア用品の棚の脇にも「マスク」がぶら下がるように陳列されていました

そして、先ほど地下鉄で見かけた「ヴァイタバイオティックス社」のサプリメント製品(写真下⬇︎)も。

f:id:JapaneseUKpharmacist:20200710044444j:plain

 

こちらの会社、英国に移住したインド系一家の成功物語の好例。

祖父が薬剤師で、インドで薬局を営んでいた。父親が1940年代のインド・パキスタン分裂の混乱の最中、10代で英国へやってきた。英・独で薬学を学び、苦労の末、ビタミン・サプリメント剤に特化した会社を設立。そして数年前から、ビジネススクールで学んだ現社長である息子さんが会社を継ぎ、著名人を起用した斬新な宣伝で、ブランド化に成功。英国一の業界シェアを達成し、世界中で展開を行なっている。

そしてこの現社長さん、英国国営放送 BBC の人気 TV シリーズ「ドラゴンズ・デン (Dragon's Den) 」にレギュラー出演をしていることでも有名。無名の起業家(たち)が、ドラゴンと呼ばれる、国内でも著名な辛腕経営者たちの前で事業計画をプレゼンし、実際に出資を募るという番組なのだけど、この「ヴァイタバイオティックス」の社長さん、確かに、毎回、出資の判断や取引の交渉、ビジネスプランへの質問の切り込み方が鋭い。

そして、私自身、先ほど、地下鉄車内でたった一つだけぽつんとあった広告を見て「さすがだな」と唸った。

誰もやらないこと、人とは違ったことを、勇気を出してやる。ここぞという局面で賭けに出て、抜きん出るという戦略よね。

 

ところで今回、私は、こちらの薬局で「オルバスオイル (Olbas Oil) 」を購入した。

オルバスオイルの詳細については、過去のこちら(⬇︎)のエントリもどうぞ

最近、英国では、国営医療病院 (NHS) 施設内では全員マスクを着用し、仕事をすることが義務付けられている。始終すごく息苦しい。でも、このオルバスオイルをマスク内部に数滴垂らすことにより、それが劇的に軽減されるの。だから、これ、目下、私の職業的必需品(写真下⬇︎)。

f:id:JapaneseUKpharmacist:20200711061020j:plain

私の現在の職業的必需品。院内感染防止のため、マスクは、国営医療サービス (NHS) から供給されるものしか使用できない規定になっている。日本製のマスクに比べ、とても息苦しく感じる素材。でも、このマスク内面に「オルバスオイル」を数滴垂らすと、大分楽になる。ちなみに、この写真にある花柄の抗菌マスクケースは、数年前、東京・後楽園の「Spa LaQua」を訪れた際に、記念品として頂いたもの。「こんなの使わないなー。英国ではマスクなんかしないんだし」と思いながら持ち帰ったが、ここにきて、突如、大活用!

お会計をしようと思ったら、現在、こちらの店舗では、感染防止を目的とし、全ての支払いを自動会計機(写真下⬇︎)にて、お客さん各自にやってもらっていると。

f:id:JapaneseUKpharmacist:20200710055211j:plain

「セルフチェックアウト」と呼ばれる自動レジ機。現金での支払いは不可でした

ちなみに、この広い駅の構内で、この日「食べ物」を販売していたのは、なんと、こちらのブーツ薬局の店頭(写真下⬇︎)と、もう一つの小さなチェーン店のカフェだけだった。外出規制解禁日と言えども、すぐには「人は戻らない」ということを、駅のテナントの経営者たちは、分かっていたのだろうな。

f:id:JapaneseUKpharmacist:20200710060008j:plain

ちなみにブーツは、英国の薬局業界の中でも特に「コンビニ色」の強い会社として知られています


駅構内にあるプライベート(民営)医療の「総合診療所」(写真下⬇︎)も、この日、営業していなかった。

f:id:JapaneseUKpharmacist:20200710060754j:plain

開店している所がほとんどない、ゴーストタウンのような駅構内

ここ、前述のように、ガトウィック空港へ行く・から帰ってきた人たちの拠点駅であることから、外国人が飛び入りで利用できるクリニックとして、普段はとても流行っている。でも、目下、英国内の空港はほぼ機能していないので、需要がないんだろうなあ。

 

せっかくロンドンの中心地まで来たのに「やることがない」ことに気づき、早々に帰宅することにした。

そんな矢先、地下鉄への乗り換え口で、心を打つ、一つの広告が目に入った。

「新型コロナ前線で働く医療従事者に、ありがとうを」と題された英国国営医療サービス (NHS) の広告で、医師、看護師、救急隊員などと共に、薬剤師(写真下⬇︎)が紹介されていたのだ。

f:id:JapaneseUKpharmacist:20200707080830j:plain

去年「英国一の街の薬剤師」として表彰された方だそうです

その週末の7月5日は、国営医療サービス (NHS) 創設 72 年目の記念日だった。それも兼ねた広告だったみたい。

2年前、70周年を盛大にお祝いした時のことは、こちらの過去のエントリ(⬇︎)もどうぞ


「マスク着用義務」「地下鉄の乗り降りの際は手の消毒を」「他人との距離を保って下さい」「切符の現金購入は控え、オンライン購入か、コンタクトレスのカードで」

などなど、コロナウイルス感染防止のため、色々なことが果てしなく注意書きされた駅構内の無数のポスター(例・写真下⬇︎)を横目で見ながら、

f:id:JapaneseUKpharmacist:20200710061938j:plain

駅構内は見渡す限り、このようなポスターだらけだった

地下鉄入り口にて、その注意書き通り、手を消毒(写真下⬇︎)し。。。。

f:id:JapaneseUKpharmacist:20200710062824j:plain

突如として設置されていた「手の消毒液ディスペンサー」。今までの英国では、決してあり得なかったもの

だーれもいない地下鉄の駅の切符売り場(写真下⬇︎)を通り過ぎ;

f:id:JapaneseUKpharmacist:20200710063505j:plain

ロンドン地下鉄ヴィクトリア駅。ここ、バッキンガム宮殿への最寄駅のため、いつもなら世界中からの観光者が行列をなす場所。でも、外出規制緩和初日ですら、人っ子一人いませんでした。あり得ない光景だ。。。

 

帰宅した。

 

コロナ渦から回復するのには、相当な時間がかかるなということを、この目で実感した「外出解禁日」の週末でした。

 

では、また。