先週末、英国ではついに、外出規制が事実上(ほぼ)解除された。
振り返れば、3月下旬から、通勤や生活上、本当に必要な時しか外出できない状態だった。
私は幸か不幸か、勤務先と自宅が目と鼻の先だし、病院内に食料品スーパーマーケットも、ちょっとした売店もあるから、この3−4ヶ月、全く「外」に出ていなかったのだ。
で、そんな私もついに、この解禁初日、ほぼ100日ぶりに外出してみることにしたの。
ロックダウン直前に、最後に外出したのは、ここ(⬇︎)でした。
行き先はね。。。。もちろん、
「薬局」(笑)
そんな訳で、ロンドンの中心街へ行くために、久しぶりに地下鉄に乗ってみると;
あまりの乗客のなさに拍子抜け。内心、市民が嬉しさで、浮かれ騒いでいる姿を想像していたのだけど。。。。
そして、よーく見渡すと、
私が乗った車両には、広告がたった一つしか貼られていなかった(写真上⬆︎)。英国の代表的なビタミン・サプリメント剤会社「ヴァイタバイオティックス (Vitabiotics) 」の宣伝だった。
日本の電車の百花繚乱のようなつり革広告には敵わないが、英国でも、地下鉄車内は、格好の「商品宣伝」場所だ。
でも、今回のパンデミックで、地下鉄を利用する人は激減。宣伝効果が薄いと、各社は次々に契約を打ち切ったんだろうな。
でもね、それ故に、この「たった一つの『サプリメント剤』の広告」が、私には、鮮烈に記憶に残ったのよ。
この会社の製品については、後で紹介するとして。。。
地下鉄を乗り継いで着いたのは、ここ(写真下⬇︎)。ロンドン市内の主要国鉄駅の一つ「ヴィクトリア駅」。
ここ、英国南部へ行く数々の列車の発着駅として知られている。南ロンドンのガトウィック空港へ直通の「ガトウィック・エクスプレス」が有名だけど、ブライトンやイーストボーンといった、ロンドンで暮らす人々が、夏場に「ちょっくら近場の海辺へ」出かける際の出発地点でもある。
ガトウィック空港内の薬局を訪れた時のエントリは、こちら(⬇︎)からどうぞ
英国南部の海辺の街の一つのイーストボーンについては、こちらのエントリ(⬇︎)もどうぞ
ちなみに私は、今からちょうど10年前、英国南部のブライトン大学 (University of Brighton) で「海外薬剤師免許変換コース (Overseas Pharmacists' Assessment Programme, 通称 OSPAP)」を履修した。その1年間、週に2日通学するのに利用した駅でもある。ブライトン大学薬学校、このヴィクトリア駅から特急を使えば、ロンドン市内からでも片道1時間半−2時間で通学できる。
で、話を戻すが。。。
それにしても、新型コロナウイルスのパンデミック始まって以来の、英国内での大々的な外出解禁日だというのに、駅の構内は閑散としていた。
早速、お目当の薬局へ。
ここ、改札口真向かいにあるために、本来ならば超多忙の、大手チェーン薬局ブーツ (Boots) の支店(写真下⬇︎)ですが、
入り口に来て、まず驚いたのが、入局制限;
「店内に、7名以上のお客さんは、入れません」(写真下⬇︎)とあった。
そして「各人が2メートルの間隔を置いて、安全に買い物をしましょう」(写真下⬇︎)と。
で、店内に入り、目を見張ったもの;
商品のほぼ2−3割が「アルコール消毒液」や「マスク」や「使い捨て手袋」。どの商品も、今まで、英国内の薬局では扱っていなかったものばかり。
店内スタッフも、完全防備で対応していた。
相変わらず、各種鎮痛剤は、品薄だ(写真下⬇︎)。このパンデミックが始まって以来、一時期、英国ではどの街の薬局からも、鎮痛剤が消えた。国民全体が「パニック買い」に走ってしまったから。
店内の床の至る所に、この注意書き(写真下⬇︎)があります。
調剤室カウンターを覗いてみると;
今まではなかった透明のプラスチックで囲いがされており(写真下⬇︎)、感染予防の対策が取られていました。
普段通り販売されているものもあった。典型的なものは、こちら(写真下⬇︎)。
そして、先ほど地下鉄で見かけた「ヴァイタバイオティックス社」のサプリメント製品(写真下⬇︎)も。
こちらの会社、英国に移住したインド系一家3代の成功物語の好例。
祖父が薬剤師で、インドで薬局を営んでいた。父親が1940年代のインド・パキスタン分裂の混乱の最中、10代で英国へやってきた。英・独で薬学を学び、苦労の末、ビタミン・サプリメント剤に特化した会社を設立。そして数年前から、ビジネススクールで学んだ現社長である息子さんが会社を継ぎ、著名人を起用した斬新な宣伝で、ブランド化に成功。英国一の業界シェアを達成し、世界中で展開を行なっている。
そしてこの現社長さん、英国国営放送 BBC の人気 TV シリーズ「ドラゴンズ・デン (Dragon's Den) 」にレギュラー出演をしていることでも有名。無名の起業家(たち)が、ドラゴンと呼ばれる、国内でも著名な辛腕経営者たちの前で事業計画をプレゼンし、実際に出資を募るという番組なのだけど、この「ヴァイタバイオティックス」の社長さん、確かに、毎回、出資の判断や取引の交渉、ビジネスプランへの質問の切り込み方が鋭い。
そして、私自身、先ほど、地下鉄車内でたった一つだけぽつんとあった広告を見て「さすがだな」と唸った。
誰もやらないこと、人とは違ったことを、勇気を出してやる。ここぞという局面で賭けに出て、抜きん出るという戦略よね。
ところで今回、私は、こちらの薬局で「オルバスオイル (Olbas Oil) 」を購入した。
オルバスオイルの詳細については、過去のこちら(⬇︎)のエントリもどうぞ
最近、英国では、国営医療病院 (NHS) 施設内では全員マスクを着用し、仕事をすることが義務付けられている。始終すごく息苦しい。でも、このオルバスオイルをマスク内部に数滴垂らすことにより、それが劇的に軽減されるの。だから、これ、目下、私の職業的必需品(写真下⬇︎)。
お会計をしようと思ったら、現在、こちらの店舗では、感染防止を目的とし、全ての支払いを自動会計機(写真下⬇︎)にて、お客さん各自にやってもらっていると。
ちなみに、この広い駅の構内で、この日「食べ物」を販売していたのは、なんと、こちらのブーツ薬局の店頭(写真下⬇︎)と、もう一つの小さなチェーン店のカフェだけだった。外出規制解禁日と言えども、すぐには「人は戻らない」ということを、駅のテナントの経営者たちは、分かっていたのだろうな。
駅構内にあるプライベート(民営)医療の「総合診療所」(写真下⬇︎)も、この日、営業していなかった。
ここ、前述のように、ガトウィック空港へ行く・から帰ってきた人たちの拠点駅であることから、外国人が飛び入りで利用できるクリニックとして、普段はとても流行っている。でも、目下、英国内の空港はほぼ機能していないので、需要がないんだろうなあ。
せっかくロンドンの中心地まで来たのに「やることがない」ことに気づき、早々に帰宅することにした。
そんな矢先、地下鉄への乗り換え口で、心を打つ、一つの広告が目に入った。
「新型コロナ前線で働く医療従事者に、ありがとうを」と題された英国国営医療サービス (NHS) の広告で、医師、看護師、救急隊員などと共に、薬剤師(写真下⬇︎)が紹介されていたのだ。
その週末の7月5日は、国営医療サービス (NHS) 創設 72 年目の記念日だった。それも兼ねた広告だったみたい。
2年前、70周年を盛大にお祝いした時のことは、こちらの過去のエントリ(⬇︎)もどうぞ
「マスク着用義務」「地下鉄の乗り降りの際は手の消毒を」「他人との距離を保って下さい」「切符の現金購入は控え、オンライン購入か、コンタクトレスのカードで」
などなど、コロナウイルス感染防止のため、色々なことが果てしなく注意書きされた駅構内の無数のポスター(例・写真下⬇︎)を横目で見ながら、
地下鉄入り口にて、その注意書き通り、手を消毒(写真下⬇︎)し。。。。
だーれもいない地下鉄の駅の切符売り場(写真下⬇︎)を通り過ぎ;
帰宅した。
コロナ渦から回復するのには、相当な時間がかかるなということを、この目で実感した「外出解禁日」の週末でした。
では、また。