日英薬剤師日記

イギリスの国営医療(NHS)病院で働く、臨床薬剤師のあれこれ

イギリスで免許を変換し、薬剤師になる方法(2)

 

今回のエントリは、シリーズ化で、前回はこちら(⬇︎)になっています。

 

4)IELTS のどの試験を受ければいいのですか? 勉強法を教えてください

IELTS (International English Language Testing System) は、英国ケンブリッジ大学とブリティッシュ・カウンシルが主催している、英語の語学能力試験です。英国の大学・大学院に入学する際や、英国薬剤師免許変換の際に、申請先の GPhC (General Pharmaceutical Council) へ提出が必要な書類の一つとなっています。「リスニング(聞く)」「リーディング(読む)」「ライティング(書く)」「スピーキング(話す)」の4分野に分かれた試験となっています。

日本で IELTS を受験する場合、ブリティッシュ・カウンシルが申込先となっているはずですが、その際「ジェネラル」か「アカデミック」のどちらかを選ぶことになります。英国の薬剤師となるために必要な試験は「アカデミック」の方です。お間違えのないように。。。。

英国の大学院に入学するのには、最低でも6.0-6.5程度のスコアが必要になりますが、GPhCに提出する証明としては、一回の試験で4分野全てに、7.0以上のスコアに到達していることが求められます。

 

試験勉強法は、人それぞれだと思います。

私は、受験日3ヶ月前ぐらいから集中的な試験準備をし、幸運なことに一回目の挑戦で7.0以上に達しました。でも、何年も前から、過去問集を全巻購入し「ちょこちょことは」勉強をしていました。

私のIELTS合格は、ある意味「奇跡」でした。その経緯は、過去のこちらのエントリ(⬇︎)もどうぞ


 「試験受験の際のコツ」を習うだけで、0.5ポイントは確実に点数アップするよ、と聞き、その当時住んでいた南東ロンドンに所在する公立カレッジの「IELTS試験対策コース」の夜間クラスに週1日、3−4ヶ月ほど通いました。それが、すごく有益でした。なので、現在日本に在住されている方でも「試験対策」のコースに通うのはオススメです。でも、日本の IELTS 対策コースの費用は、ものすごく高額ですね。時間に余裕があるのであれば、英国へ短期留学してその「対策コース」へ通う方がおトクそう。。。

でも、究極の準備法は、やはり;

「自分でひたすら過去問をやる」かな。

私なりの「試験テクニック」のアドバイスは;

1)リーディングは、試験問題全文を読んでいる時間は(到底)ない。最初に質問部分を読み、それで「答えを探すように」本文を読んで、解答していく。

2)ライティングは「グラフの比較」とか「特定のトピックで賛否を論じる」といった試験問題だったため、インターネット上に掲載されている「これが7.0以上の点数の作文例」というサンプルを集めて、それらを数多く暗記した。そうすることによって「IELTS 英作文で必要とされる決まり文句」をパターン化し、それを本番で応用した。ライティング、自身では一番苦手とした分野だったけど、これ、かなり効率的な勉強法だったと思う。

3)リスニングは、自宅で毎夕、過去問集に付随していた CD を聞きながら、実践的に練習した。リーディングと同じで、試験の音声が流れ出す前に、いち早く質問部分に目を通し「どのような内容のことが聞かれるのか」という予想をしながら、ポイントを押さえた聞き方をすることが大切。

4)スピーキングは、過去問集の最後のページにある「試験の進行順序」と解答の骨子を頭に入れ、大体「どのようなことを、制限時間内に話せば良いのか」を把握。しかし実際の所、スピーキングに関しては、私自身、ほぼ(正式な)練習をした記憶がない。。。

でも、その代わりと言っていいのか、1990年代中盤から2000年中盤に、世界中で爆発的にヒットしたアメリカのTVドラマ「フレンズ」の DVD (⬇︎)を購入し、長年のめり込むように観ていました。

フレンズ <シーズン1-10> DVD全巻セット(60枚組)

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  • 発売日: 2016/11/23
  • メディア: DVD
 

今観ると、相当時代遅れのドラマ(携帯電話とかもスマートフォンではなく、レンガぐらいの大きさのものだった頃のニューヨークに住む若者たちの話だからね。笑)だけど、「フレンズ」で使われているセリフは、全て「超基本の日常英会話」。これを繰り返し観ていたこと、そして、当時すでに、英国でファーマシーテクニシャンとして働き始めており、否が応でも英語で仕事をしなければならない環境にいたことで、いつの間にかスピーキングとリスニング力は身についていたのではと思います。

だから、リスニングとスピーキングに関しては、自分の好きな「簡単な」英語が使われているドラマとか映画をたくさん観て、楽しみながら勉強するのがオススメ。

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書店にはたくさんの「IELTS教材」が売られている。でも、まずは「過去問」ありきだと思う。実はこれ、日本や英国の薬剤師免許試験と同じ勉強法。どんな傾向のどんな問題が出る試験なのかを把握するのが、とても大切 

 

5)OSPAP(英国薬剤師免許変換コース)の概要を教えてください

OSPAP、現在、英国内の5校の薬科大学が開講していますが、大学によって、カリキュラムや授業形態、そして所在地の土地柄がかなり異なります。できれば、入学希望の大学とそのOSPAP担当者の元を訪れ、ご自分の目で「本当にここ、英国の薬剤師になるための一歩として1年間暮らし、勉強するのに適した場所なのかな?」ということを事前調査することをおすすめします。

ちなみに、私の独断と偏見に満ちた「各校案内」は;

サンダーランド大学(英国北部):OSPAP は長年、この大学のみでしか開講されていなかった。よってその「老舗」の利点から、恐らくコース内容とカリキュラムは一番良く、外国人薬剤師学生に対して最も面倒見が良いという評。ただし私自身は、ロンドンを離れたくなかったこと、そして、ファーマシーテクニシャンとして働いていた間に、以下の薬科大学でも OSPAP が開講され始めたため、ここを選ばなかった。

アストン大学(英国中部):サンダーランド大学に次いで、OSPAPコースとしては2番目に古い大学。英国第2の都市バーミンガムに所在。コースの詳細は不明(ごめんなさい)。でも、私、2006-7年にかけて、この大学にて「精神科薬剤治療学」の卒後教育を履修した。で、ある日、課題を提出しにこちらの薬学部を訪れた際、掲示板に貼られていた OSPAP 学生名簿一覧を見て「あっ、日本人がいるんだ!」と、びっくりした。で、その長年謎であった方に、去年、ロンドン市内で催された薬剤師の勉強会で思いがけず出会った(⬇︎)のは、本当に不思議な巡り合わせだった。

その時のことは、こちらのエントリ(⬇︎)もどうぞ

ブライトン大学(英国南部):私が履修・卒業した学校。1週間に2日しか通学しなくて良いため、当時は9割以上のコースメイトがロンドンに在住し、電車で通っていた。そして、その大部分の者が、通学しない日をロンドン市内の薬局でアルバイトし、学業と仕事を両立させていた。よって、学生の自主的な学習に任せる部分の多い OSPAPであることが大きな特色。

ブライトン、英国南部の避暑地として有名な街です 。ロンドンから往復するのに主に使用する駅は、こちら(⬇︎)になっています。

キングストン大学(ロンドン郊外):2011年の開講以来、ロンドン市内から最もアクセスが良い学校になっている。週4日の通学。私がブライトン大学 OSPAP の入学許可通知を得た後に開校が決定されたため、自身の選択肢にならなかった。新設校ながら実践的な教育を提供し、年々、評判が高くなってきている。ちなみに、私が現在勤務する大学病院は、こちらの薬科大学と提携しており、学部生の実習場所(⬇︎)となっています。

ハートフォードシャー大学(ロンドン北部に隣接する州):ここの薬科大学、私のロンドン大学薬学校大学院時代の恩師たちが創校した。で、この大学で OSPAP を開講することになった際、ブライトン大学の課程を卒業したばかりであった私に、色々な助言を求めてきた。それまでの恩返しの気持ちを込めて、手元にあったコース案内や要綱、大学のオリジナル教材のほぼ全てを寄贈しました。でも、この大学「ロンドンから近い」と謳っている割には、交通の便がかなり難点。。。 その分、薬学部がある広大な敷地に、学生寮や、最新設備の図書館・ラーニングセンター、食堂、売店、医療センター、薬局などが完備されている(リンク下⬇︎)。学生らしい「ザ・キャンパスライフ」を送るには、ここが最適かも。週3−4日の講義出席が必要。

以前、英国ハードフォードシャー大学薬学部内にある薬局を訪れた時のことは、こちら(⬇︎)もどうぞ

私が約20年前、英国へ来た当初の目的であった「ロンドン大学薬学校」の修士コースと私の「恩師たち」についての詳細は、こちら(⬇︎)からどうぞ。ちなみに、このコースは、OSPAPとは全く異なるものです


OSPAP、私が履修した頃は、「化学」と「薬事法規・倫理」、そして「調剤実技」と「OTC薬販売法」だけが、英国薬剤師免許登録先 GPhC (General Pharmaceutical Council) が定める「必須科目」だった。だから、それ以外の科目やコース内容は、各大学次第であり、よって、どこも著しくカリキュラムが異なっていた。

ちなみに、私が卒業したブライトン大学では;

入学直後の最初の数週間に化学の集中講義があり、その最後に、多肢選択法の試験に合格しなければならなかった。日本の薬科大学を卒業してほぼ20年後に「ベンゼン環」や「ラセミ体」「吸光光度分析法」とか学び直すの新鮮、いや。。。地獄でした(苦笑)。

週2日の通学は;

木曜日が学部生と一緒の講義。「薬事法規・倫理学」や「ドラッグデリバリー学」の講義が通年であり、「医薬品開発・製造」の講義を半年に渡って学んだ。それから選択科目を一つ取らねばならず、私は「精神科薬理学」を専攻した(他の選択科目としては「応用化学」「抗生物質学」「医療植物学」といったものがあったように記憶している)。

金曜日は、OSPAP 学生だけの授業。「実習室」(写真下⬇︎)にて丸一日集中訓練を受けるスタイルだった。調剤、OTC 薬販売の方法とか、臨床薬学実務とかを学んだ。秋の中盤に大掛かりな調剤実技試験があった。

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ブライトン大学「薬局実務実習室」。OSPAP (英国薬剤師免許変換コース) の授業は毎週金曜日、ここで行われた。実際の薬局のように本物の医薬品や薬局実務文献が取り揃えられ、最新のAV機器も完備し、実践的な授業だった

その他にも、自宅学習としてのモジュールとして、薬学論文を批判的に読むとか、英国国営医療 (NHS) のしくみや昨今の改革を分析し小論文を書くといった課題もあった。それから、学生が小グループに分けられ、近隣の小学校へ出向き「公衆衛生」の授業をする、という課題もあったな。

試験は1月の終わりと、5−6月にかけて。ほぼ全てが筆記試験だったけど、5月末に、一年間に渡って薬局実務実習で学んだことを総括評価されるOSCE があった。

原則「皆、合格させてあげる」コースだったと思う。その点に関しては、私が英国へ来た当初に入学した「ロンドン大学薬学校臨床薬学・国際薬局実務&政策 修士コース」の妥協を(一切)許さない採点基準とは大違いだった。最終的に、私が在籍した年のブライトン大学 OSPAP は、約50名のクラス中、一割程度が予定通りに卒業できなかっただけ(→注:数ヶ月後に行われた追試により、在学中に妊婦となった方一人を除き、全員卒業しました)。私も単位を一つ落とした(はず)なのに「メリット」という、最優秀学生賞を逃した学生に授与される成績で卒業した。

絶対に、点数の「下駄履かせ」が行われていたと、確信しています(笑)。

  

「イギリスで免許を変換し、薬剤師になる方法」については、次回へ続きます。

 

以後は「英国薬剤師になるのに要する費用」「英国薬剤師としての仕事は楽しいですか?」「目指す人への注意事項」「似て非なる道もアリ」「今すぐできる準備」といった質問の答えを網羅する予定です。

 

では、また。

 

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ブライトン大学薬学部。ちょうど私が在籍した年 (2010-2011) に、この新館がオープンした。ちなみに OSPAP を提供している薬科大学は、どこも「旧職業訓練校」か「新設大学」。英国の伝統的な大学の雰囲気とはかなり異なる趣です